法人事業税は①所得割(所得に対する課税)と②収入割・③付加価値割・④資本割という外形基準の部分に分かれています。付加価値割と資本割は「外形標準課税」と呼ばれ、対象とする法人の範囲が法律で決められています。
付加価値割・資本割(外形標準課税)の対象法人規模
条件 | 税負担 | 根拠 |
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現行基準:資本金または出資金が1億円超の普通法人 | 付加価値割と資本割が課されます。これにより、事業規模が大きい法人は所得に関係なく外形基準で事業税が課税されます。外形標準課税の対象でない法人は所得割のみです。 | 埼玉県の「法人事業税」ページでは、外形標準課税対象法人が行う通常の事業について所得割・付加価値割・資本割の3本立てで税を納めることが示されています。 |
減資した法人(令和7年4月1日以後開始事業年度から適用) | かつて外形標準課税対象だった法人が資本金を1億円以下に減らしても、前期が外形標準課税の対象であり「資本金+資本剰余金(払込資本)」が10億円を超える場合は、引き続き付加価値割・資本割の対象となります。 | 神奈川県資料によると、減資によって資本金が1億円以下となった法人でも払込資本が10億円超なら外形標準課税の対象とされることが明記されています。 |
100%子法人等(令和8年4月1日以後開始事業年度から適用) | 親会社が払込資本50億円超の「特定法人」で、子会社の資本金が1億円以下かつ払込資本が2億円超の場合、子会社は外形標準課税の対象となります。100%グループ内で複数の特定法人が株式の全てを保有する場合も同様です。 | 神奈川県資料では、資本金1億円以下でも払込資本が2億円超の100%子会社は外形標準課税の対象とされることが示されています。 |
免除規定 | 法律上の特例として、新設法人や連続赤字法人には一定期間、付加価値割と資本割が猶予される場合がありますが、基本的には上記基準で対象か否かが決まります。 | 埼玉県の外形標準課税概要では、赤字ベンチャー企業等への徴収猶予制度が説明されています。 |
補足:資本金額や払込資本額は各事業年度末日時点の貸借対照表の数値で判断されます。付加価値割の課税標準は報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料を合計した「収益配分額」に単年度損益を加算または減算したもの、資本割の課税標準は資本金等の額です。税率(都道府県によって多少異なる)は付加価値割が概ね1.2%、資本割が0.5%前後であり、所得割は9.6%程度です。
収入割が課される法人規模
収入割は、特定の業種(電気供給・ガス供給・保険業・貿易保険業)に対して売上高を課税標準に課すもので、業種や資本金によって負担する税目の組合せが変わります。埼玉県の法人事業税の説明を例に、各業種と課される税目を整理します。
業種と法人規模 | 納める税目 | 説明 |
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電気供給業(小売電気事業・発電事業・特定卸供給事業を除く)・導管ガス供給業・保険業・貿易保険業 | 収入割のみ | 一般的な電気供給・導管ガス供給、保険業等は収入割のみが課されます。資本金が1億円超かどうかにかかわらず、付加価値割や資本割は課されません。 |
小売電気事業・発電事業・特定卸供給事業を行う法人で、外形標準課税の対象外(資本金1億円以下かつ払込資本要件等に該当しない) | 収入割+所得割 | 小売電気事業等の中小企業は、売上高に対する収入割と所得に対する所得割の合計で法人事業税を納めます。 |
小売電気事業・発電事業・特定卸供給事業を行う法人で外形標準課税対象 | 収入割+付加価値割+資本割 | 資本金1億円超や上記の払込資本要件に該当する大企業が小売電気事業・発電事業等を営む場合、収入割に加えて付加価値割・資本割も課されます。 |
特定ガス供給業(導管ガス供給業以外の特別一般ガス導管事業者の供給区域でガス製造事業を営む者) | 収入割+付加価値割+資本割 | 令和6年度税制改正により、特定ガス供給業者は収入割に加えて付加価値割・資本割の対象となります。 |
参考:保険業に対する収入割の課税標準は、生命保険会社の場合は「保険料等収入×24%」など各保険種別ごとに所定の割合を掛けた額となります(大阪府の収入金額課税の説明による)。しかし、保険業は付加価値割・資本割の対象にはならないため、資本金の大小に関係なく収入割のみを納めます。
まとめ
- 付加価値割と資本割は、原則として資本金1億円超の法人に課される「外形標準課税」の部分です。
- 令和6年度税制改正では、資本金1億円以下でも払込資本が10億円超の法人や、親会社が払込資本50億円超の100%子法人で払込資本が2億円超の法人などを外形標準課税の対象に含める見直しが行われ、令和7年(2025年)および令和8年(2026年)以降に段階的に適用されます。
- 収入割は特定の業種(電気供給業・ガス供給業・保険業・貿易保険業)に対する税で、一般の電気供給や導管ガス供給、保険業は収入割のみを負担します。小売電気事業等の中小企業は収入割+所得割、大企業は収入割+付加価値割+資本割となります。
以上のように、法人事業税の付加価値割・資本割・収入割は法人の資本金や払込資本、業種に応じて課税される仕組みであり、令和6年度税制改正により資本金1億円以下の法人でも外形標準課税の対象となる場合がある点に注意が必要です。
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