日本の相続税率は累進課税方式で、受け取る財産が大きいほど税率が高くなります。この税率は単純に遺産全体に当てはめるのではなく、**「法定相続分に応ずる取得金額」**に対して適用されます。法定相続分に応ずる取得金額とは、遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた課税遺産総額を相続人の法定相続分で割り振った金額です。ここで得られた各人の金額に下表の税率を適用し、税率別の控除額を差し引いた税額を合計することで相続税の総額を求めます。
相続税速算表(2025年・令和7年現在)
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(出典:国税庁「相続税の税率」)
計算方法のポイント
- 基礎控除の計算 – 正味の遺産額から3,000万円+600万円×法定相続人の数を差し引き、課税遺産総額を算出します。たとえば法定相続人が妻と子2人(3人)の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
- 法定相続分に応ずる取得金額の計算 – 課税遺産総額を法定相続分で按分して各人の取得金額を求めます。
- 税率の適用 – 上表の税率を各人の取得金額に当てはめ、控除額を差し引いて算出税額を求めます。たとえば取得金額が3,000万円の場合は15%の税率で、相続税は3,000万円×15%-50万円=400万円です。
- 相続税の総額 – 各人の算出税額を合計したものが相続税の総額です。総額を実際の取得割合で案分し、配偶者控除や未成年者控除など各種控除を適用して納付税額を算出します。
例:遺産総額2億円を妻と子2人が相続する場合
- 正味の遺産額が2億円、法定相続人が3人なので基礎控除は4,800万円です。課税遺産総額は2億円-4,800万円=1億5,200万円。
- 法定相続分は妻が1/2、子が1/4ずつなので妻の取得金額は7,600万円、子はそれぞれ3,800万円。
- 税率表にあてはめると妻の税額は7,600万円×30%-700万円=1,580万円、子の税額は3,800万円×20%-200万円=560万円ずつ。
- 3人分の税額を合計すると相続税の総額は2,700万円となります。実際の納付額は各人が受け取る遺産額の割合に応じて按分され、配偶者の税額軽減などの控除も考慮されます。
最近の改正動向
2025年(令和7年)現在、相続税の税率構造は2015年(平成27年)改正時に導入された8段階の累進税率(最高税率55%)が継続しています。令和6~7年度の税制改正では贈与税と相続時精算課税制度の見直しが行われましたが、相続税の税率や基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に変更はありません。
このように、相続税では課税遺産総額や法定相続分に応じた取得金額をもとに税率を適用するため、相続人の数や遺産の分け方によって負担が大きく変わります。具体的な計算や税務手続きについては、国税庁のガイドや税理士への相談を活用すると安心です。
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