労働組合の組織率(労働組合組織率)は、労働組合に加入している労働者が全雇用者(労働者)に占める割合を示す指標です。
厚生労働省が毎年実施する「労働組合基礎調査」では、組織率を「推定組織率」と呼び、次のように定義しています。
- 推定組織率の定義: 調査で把握した労働組合員数を、総務省統計局の「労働力調査」における雇用者数(各年6月分の原数値)で割って算出する。つまり「労働組合員数 ÷ 雇用者数 × 100」で求められます。
- この調査では、組合員が個人加入する形式の労働組合を「単一労働組合」と呼び、その組合員数を用いて推定組織率を計算します。
最新の推定組織率(2024年調査)
厚生労働省が2024年12月18日に公表した「令和6年労働組合基礎調査」の概要によると、2024年6月30日現在の労働組合員数は991万2千人で、前年より2万6千人(0.3%)減少しました。雇用者数が6139万人と前年より30万人増えたことから、**推定組織率は16.1%**となり、前年より0.2ポイント低下し、調査開始以来最も低い水準となりました。
主なポイントは以下の通りです。
- 女性組合員と女性組織率: 女性の労働組合員数は350万5千人で前年より3万2千人(0.9%)増えましたが、女性の推定組織率は12.4%で前年と同水準でした。
- パートタイム労働者: パートタイム労働者の労働組合員数は146万3千人となり前年より5万3千人(3.7%)増え、全労働組合員数に占める割合は14.9%、パートタイム労働者における推定組織率は8.8%でした。
- 産業別の状況: 単位労働組合員数を産業別に見ると、製造業が261万5千人(全体の26.5%)と最も多く、卸売業・小売業156万人(同15.8%)、建設業83万9千人(同8.5%)が続きます。一方、公務や運輸・郵便業などは前年から組合員数が減少しています。
長期的な推移と背景
労働組合の組織率は戦後一貫して低下傾向にあり、1949年の55.8%前後から2024年には16.1%まで落ち込みました。労働政策研究・研修機構(JILPT)は、推定組織率が2010年の18.5%から9年連続で低下し、2020年にいったん17.1%へ上昇したものの、2021年から再び下落し続けていると指摘しています。
組織率低下の背景としては、次のような要因が挙げられています。
- 非正規雇用の増加: パートタイムや派遣など非正規雇用が増加し、これらの労働者の組合加入率が低いことが全体の組織率低下につながっている。
- 中小企業の組織化の難しさ: 日本では大企業に比べて中小企業に労働組合がないケースが多く、企業規模が小さいほど組合員数や組織率が低い。
- 若年層の意識変化: 若い世代は個人のキャリアやワークライフバランスを重視する傾向が強まり、従来型の集団的な組合活動に魅力を感じにくいという指摘がある。
- 働き方の多様化と組合活動の対応遅れ: テレワークや副業など働き方の多様化に対し、労働組合の活動や情報発信が十分に対応できていないことも、組合離れの一因とされています。
組織率の意義
労働組合の組織率は、労働者が集団的な交渉力をどれだけ持っているかを示す重要な指標です。この割合が高いほど、労働組合が労働条件や賃金について事業主と交渉する力が強くなり、社会全体の労働環境に影響を与えやすくなります。逆に組織率の低下は、企業内に組合のない労働者が増え、労働者の声が届きにくくなることを意味します。
そのため、労働組合や政策立案者は、若年層や非正規労働者に対応した新しい組織化の方法や、デジタルツールを活用したコミュニケーションの強化など、組織率向上に向けた取り組みを検討しています。
まとめ
- 労働組合の組織率は「労働組合員数 ÷ 雇用者数 × 100」で計算される割合で、厚生労働省の調査では「推定組織率」として定義される。
- 2024年調査では、労働組合員数は991万2千人、推定組織率は16.1%となり過去最低を更新した。
- 女性組合員やパートタイム労働者の組織率はそれぞれ12.4%、8.8%で、総組織率より低い。
- 長期的に組織率は低下傾向にあり、2010年の18.5%から縮小を続けている。非正規雇用の増加や若年層の意識変化などが背景とされる。
労働組合の組織率を高めるには、働き方の多様化に対応しつつ、若い世代や非正規労働者へのアプローチを強化することが重要とされています。
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