以下は孫へ資金を贈与する場合に活用できる主な優遇制度です。制度の内容・要件は随時改正されるため、利用する際は最新の法令や金融機関の手引きを確認し、必要に応じて税務署や税理士へ相談してください。
毎年110万円まで非課税(暦年課税の基礎控除)
- 暦年課税では、受贈者(贈与を受ける人)ごとに年間110万円までの贈与は非課税です。贈与者が複数いても基礎控除額は一人当たり110万円で変わりません。
- 贈与額が110万円を超えると超過部分に贈与税が課税されます。孫への暦年贈与はコツコツ行うと相続財産を減らす効果がありますが、令和6年(2024年)以降の贈与は相続開始前7年以内の贈与が相続税に加算されるようになり、死亡前4~7年分の贈与は合計100万円までしか控除されないことに注意が必要です。
教育・生活費の援助は必要な都度なら非課税
- 扶養義務者(親や祖父母)から生活費や教育費として必要な都度直接支払われる金銭は贈与税の対象外です。生活費には治療費や養育費、教育費には学費・教材費などが含まれます。
- ただし数年分まとめて渡す・預金する・株式や不動産購入に充てるなど、本来の目的以外に使うと贈与税の課税対象となります。
住宅取得等資金贈与の特例
- 父母や祖父母など直系尊属から18歳以上の子や孫が住宅用の家屋の新築・購入・増改築に充てる資金を贈与された場合、要件を満たすと一定額まで贈与税が非課税となります。令和6年1月1日~令和8年12月31日までの贈与が対象で、省エネ等住宅は1,000万円まで、その他の住宅は500万円までが非課税限度額です。
- 受贈者は贈与を受けた年の1月1日に18歳以上で、所得制限(所得2,000万円以下など)や住宅の床面積等の要件を満たす必要があります。資金は翌年3月15日までに住宅取得等に充てることが条件です。
教育資金の一括贈与の非課税制度
- 祖父母や父母から30歳未満の孫・子へ教育資金を一括で贈与する場合、令和8年3月31日までに贈与された金銭や信託受益権等のうち1,500万円まで(習い事など学校以外への支払い分は500万円まで)贈与税が非課税となります。
- 受贈者は金融機関で「教育資金口座」を開設し、教育資金非課税申告書を提出します。支払い時は領収書を金融機関に提出する必要があります。30歳までに使い切れなかった残額は贈与税の対象となり、贈与者が死亡した場合は残額が相続税の対象になることがあります。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度
- 平成27年4月1日から令和9年3月31日までの間、18歳以上50歳未満の子や孫が結婚・子育て資金に充てるために直系尊属から一括贈与を受けると、1,000万円までの金銭や信託受益権等が非課税となります。この中で結婚費用の非課税枠は300万円とされます。
- 受贈者は金融機関で結婚・子育て資金管理契約を結び、非課税申告書を提出する必要があります。贈与者が亡くなった時点や受贈者が50歳になった時点で使い残しがある場合には残額に贈与税または相続税が課税されます。
相続時精算課税制度(特定の子・孫への大口贈与に利用)
- 60歳以上の父母または祖父母が18歳以上の子や孫に贈与する場合に選択できる制度で、贈与者ごとに累計2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。2,500万円を超える部分には一律20%の税率が適用されます。
- 相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税へ変更できなくなり、贈与した財産は将来の相続税計算時に相続財産に加算されます。
- 令和6年からは相続時精算課税でも年間110万円の基礎控除が設けられたため、基礎控除分は相続財産に加算されません。
障害者扶養信託
- 孫が障害者の場合、贈与者が信託銀行などと特定障害者扶養信託契約を結び、信託を設定すると、特別障害者は6,000万円、その他の特定障害者は3,000万円までの信託受益権の価額が非課税になります。信託口座から生活費や医療費を定期的に払い出す仕組みです。
注意点
- 各制度には年齢・所得・用途・期間などの細かな要件があり、要件を満たさないと課税対象になります。
- 特例で非課税となった教育資金や結婚・子育て資金の残額は、贈与者が死亡した時点で管理残額として相続税の課税対象となる場合があります。
- 2024年以降は相続税の生前贈与加算期間が7年に延長され、死亡前4~7年分の贈与については合計100万円を超える部分が相続税の対象に戻されます。
これらの制度を組み合わせることで、孫への資金援助を効果的に行いながら税負担を軽減することが可能です。利用時は制度の期限や要件に注意し、贈与契約や申告書の作成は税理士など専門家に相談することをおすすめします。
コメント