労働基準法は「指揮命令下で労働し賃金を受ける者」を保護する法律であり、使用者は義務教育修了前(満15歳到達後最初の3月31日まで)の者を雇用してはならないと定めています。そのため従業員として社会保険に加入できる最年少者は、実務上は中学校を卒業した15~16歳となります。
しかし、役員は労働基準法でいう労働者ではなく、会社法上は「経営を担う立場」で委任契約に基づいて職務を行います。このため次の違いがあります。
- 役員は労働基準法の年齢制限に直接は該当しない。
会社法331条は、取締役の欠格事由として年齢を挙げておらず、「未成年者でも取締役に就任できる」と考えられます。労働基準法による年少者の雇用禁止は「労働契約を結んで働く者」を対象とした規制であり、役員は通常労働者に該当しないため適用されません。 - ただし、役員就任には実務上の制約がある。
非取締役会設置会社では就任登記の際に印鑑証明書が必要ですが、印鑑証明は原則15歳以上からしか取得できないため、15歳未満の者は事実上役員になれません。取締役会を設置する会社では平取締役に印鑑証明を要求しないため、15歳未満でも就任できる場合があります。また、未成年者が取締役に就任するには親権者の同意や営業許可が必要とされ、実質的に役員としての職務を遂行できる能力も求められます。 - 実質的に従業員として働く役員には労働法と社会保険が適用されることがある。
役員であっても職務内容が従業員と同じで、指揮監督下で働き賃金を受けている場合には労働者性が認められ、労働基準法の保護を受ける可能性があります。また健康保険・厚生年金保険は「適用事業所に使用される70歳未満の者」を被保険者とするため、報酬を受けて実質的に業務に従事している役員は未成年であっても加入義務があります。逆に非常勤や名義だけの役員で報酬がない場合は社会保険の適用外です。
まとめ: 労働基準法の「15歳未満を雇用できない」という規定は従業員に対するもので、委任契約に基づく会社役員には直接適用されません。会社法上は未成年者でも取締役になれますが、就任登記の手続きや実務能力の点から実際には15歳以上が一般的です。役員が実際に労働者として働き報酬を受ける場合は労働基準法や社会保険の適用を受けるため、従業員と同じ加入要件(中学卒業後の15歳~16歳以上)を満たす場合に厚生年金や健康保険に加入する必要があります。
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