損益計算書の表示方法を決めるのは会社計算規則や財務諸表等規則です。これらの規則を見ると、売上高は必ず表示しなければならないものの、項目の細分の要否は各会社の実態に応じて決めるものとされています。
会社計算規則の考え方
- 会社計算規則88条は、損益計算書を「売上高」「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外収益」「営業外費用」「特別利益」「特別損失」の区分ごとに表示するよう定めています。そのうえで「各項目について細分することが適当な場合には、適当な項目に細分することができる」と明記しており、売上高を事業別や製品群別に分けて表示することが可能です。
- 特別利益・特別損失については項目ごとに細分表示が義務付けられ(同条2項・3項)、金額が重要でないものは細分しないことも認めています。
- 損益計算書の要旨について定めた会社計算規則143条では、損益計算書の各項目を「適当な項目に細分することができる」とするとともに、会社の損益の状態を明らかにするため必要がある場合には「重要な適宜の項目に細分しなければならない」と規定しています。つまり、売上高が複数の事業や製品から構成され、その内訳が損益の理解に重要であれば区分して表示しなければなりません。
財務諸表等規則による表示
- 金融庁の財務諸表等規則(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則)でも、売上高は「売上高を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない」と定めています。したがって損益計算書には必ず「売上高」または会社の実態に応じた名称(営業収益など)で売上総額を表示する必要があります。
- 同規則のガイドライン72‑1は「売上高については各企業の実態に応じ、売上高・売上収益・営業収益等適切な名称を付すこと」とし、72‑2は顧客との契約に金融要素が含まれる場合には「顧客との契約から生じる収益」と「金融要素の影響(受取利息・支払利息)」を損益計算書で区分表示することを求めています。つまり、売上高の金融要素やその他の収益を明示する必要がある場合には区分表示しますが、通常は1つの「売上高」科目で表示します。
実務的な整理
- 基本表示は「売上高」単独 – 上記規則のとおり、損益計算書には売上高を示す科目を必ず掲記します。特に、売上原価や販売費等との関係で損益を把握しやすくするため、総額を1行で記載することが一般的です。
- 内訳の任意・義務 – 会社計算規則88条および143条は、各項目を「細分することができる」としており、必要に応じて売上高を事業別・製品別等に区分しても良いとしています。また、損益の把握に重要な場合には細分を義務付けています。例えば複数のセグメントで売上規模が大きく異なる場合や、事業ごとに利益率が大きく異なる場合には、事業別売上高を表示することが望ましいでしょう。
- 新収益認識基準への対応 – 財務諸表等規則ガイドライン72‑1・72‑2は、収益認識基準に基づき、売上高を顧客との契約から生じる収益とその他の収益に区分することや、金融要素を切り分けて表示することを求めています。内訳の表示は主に注記で行われますが、必要に応じて損益計算書内に区分表示することも検討します。
結論
損益計算書では必ず売上高を表示する必要がありますが、売上高の内訳は各会社の実態に応じて決定します。会社計算規則は項目の「細分を許容し、必要な場合には義務付ける」と規定しているため、事業ごとの売上高が財務内容を理解する上で重要であれば区分表示すべきです。重要性が低い場合や情報提供価値が乏しい場合は、売上高を1行で表示し、必要な内訳は注記や補足資料で開示する方法が一般的です。
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