青色申告をする中小法人が欠損金を繰り越す場合の要件や保存期間は、国税庁の解説と法人税法に基づいています。以下に、そのポイントをまとめます。
青色中小法人の欠損金繰越控除と要件
- 繰越期間と対象期間
国税庁のタックスアンサーによれば、欠損金の繰越控除は「各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度」に生じた欠損金額に適用されます。平成30年4月1日以前に開始した事業年度の欠損金は9年間ですが、それ以降は10年間(10期分)繰り越せます。 - 適用要件
- 欠損金が生じた事業年度に青色申告書による確定申告をしていること。
- その後の各事業年度でも連続して確定申告書を提出していること。無申告期間がある場合は、期限後申告などで整理しておく必要があります。
- 中小法人等以外の法人は繰越控除額が所得の50%に制限されますが、中小法人(資本金1億円以下など)はこの制限がなく全額控除できます。
- 決算期の変更や短期決算への影響
法人税法では「事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度」と規定されているため、繰越期間は暦年ではなく10事業年度でカウントします。決算期変更により1年未満の事業年度が生じても1期として扱われるため、繰越控除の期限が暦年換算で早まることがあります。たとえば3月決算から12月決算へ変更すると、調整年度(9か月)も1期と数えられ、その後の10期目の開始日が早まるため、古い欠損金の期限が短くなる点に注意が必要です。
帳簿書類の保存期間
- 法人は帳簿や証憑書類を、確定申告書の提出期限の翌日から通常7年間保存しなければなりません。帳簿には総勘定元帳や仕訳帳など、書類には棚卸表や決算書、領収書などが含まれます。
- ただし青色申告事業年度で欠損金が生じた場合は保存期間が10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)に延長されます。これは繰越欠損金の適用期間に合わせたもので、後の事業年度で控除を受ける際に税務署から帳簿保存を求められても対応できるようにするためです。
- 10年間という表現は暦年ではなく10期分の事業年度を指すため、短い事業年度がある場合は実際の保存期間が10年未満になることがあります。決算期変更などで1年未満の事業年度が含まれる場合でも、10期分の帳簿資料を保存するようにしましょう。
まとめ
青色申告の中小法人が繰越欠損金の制度を利用するには、欠損金が生じた年度に青色申告をし、その後も連続して確定申告書を提出することが必要です。繰越控除の対象は「事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度」分の欠損金であり、決算期変更によって短い事業年度がある場合でも1期として数えられるため、実際の暦年での繰越期限や保存期間が変わる場合があります。帳簿書類は通常7年間保存しますが、欠損金が生じた青色申告年度や災害損失が生じた白色申告年度は10年間保存しなければならない点に注意してください。
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