有価証券の譲渡は「消費ではなく資本の移転」と位置付けられているため、消費税は非課税です。しかし、非課税取引を多く行う事業者は、課税売上割合の計算で不利になるという問題が生じます。課税売上割合は、課税売上高を「課税売上高+非課税売上高」で割って算定します。この割合が低いほど仕入税額控除の対象額が小さくなり、最終的に納付する消費税が増えるしくみです。
金融機関や投資会社のように有価証券の売却額が巨額になる場合、本来消費行為ではない資本の移転が分母に全額加算されると、課税売上割合が極端に低下し、仕入税額控除をほとんど受けられない事態が発生します。これでは同じ規模の売上を持つ他業種と比べて税負担が著しく重くなり、公平性を損ないます。また、証券取引自体は金融市場の流動性を維持するために必要な行為であり、税制によって過度に抑制すべきではないとされています。
そこで消費税法は、有価証券の譲渡に関する課税売上割合の計算に特例を設けています。譲渡対価の全額ではなく、その5%相当額のみを非課税売上高として分母に含めると定め、残りの95%分は計算上無視します。5%という割合は、有価証券の売買に伴う受取手数料や利益部分が全体のごく一部に過ぎないこと、非課税取引でもある程度の管理・情報提供サービスが内在していることなどを考慮し、課税とのバランスを保つために設定されています。また、ゴルフ場の会員権のように、実質的にサービス利用権とみなされるものはこの特例の対象外で、譲渡額全額が分母に含まれます。
要約
- 有価証券の譲渡は消費税の非課税取引だが、巨額の譲渡額がそのまま非課税売上高に算入されると課税売上割合が大幅に下がり、仕入税額控除が減って税負担が不均衡になる。
- 金融市場への影響や税負担の公平性を考慮し、消費税法では譲渡対価の**5%**のみを非課税売上高として計算上含める特例を採用している。
- これにより、非課税取引を多く行う事業者でも課税売上割合が極端に低下せず、他業種と同程度の税負担となるよう調整されている。
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