ニューモント第3四半期決算―金高騰と生産減

ニューモントの第3四半期決算は、金価格の歴史的な高騰を追い風に、売上高も利益もアナリスト予想を大きく上回りました。NASDAQに転載されたZacksリサーチによれば、9月末までの3か月間の売上高は55.2億ドルと前年同期比20%増加し、アナリストのコンセンサス(49.7億ドル)を11.06%上回りました。また調整後1株利益は1.71ドルで、前年同期の0.81ドルから大幅に増加し、予想1.29ドルを32.56%上回りました。これらの好業績の要因は、平均金価格が1オンス当たり3,539ドルと前年の2,518ドルから急上昇したことであり、金価格の高騰がニューモントの利益率向上に寄与したことは明らかです。

正命題(テーゼ): 好調な決算と株主還元

ニューモントは金価格の記録的な高騰を背景に、期待以上の利益・売上を記録しました。収益の伸びに合わせて同社は巨額の自社株買いを発表し、3兆ドル規模の新たな買い戻し計画によって株主還元を強化しました。金の安全資産としての需要は地政学リスクや米国の保護貿易政策などで高まり、当面は高値が維持されるとの見方も投資家に安心感を与えています。この環境下でコスト抑制や運営効率を高めることができれば、ニューモントは過去最高水準の金価格を収益化し続ける可能性があるでしょう。

反命題(アンチテーゼ): 生産減とフリーキャッシュフローの懸念

しかし、好業績の裏では生産量の低下という課題が顕在化しています。第3四半期の金の生産量は前年同期比15%減の142万オンスにとどまり、鉱石品位の低下やペニャスキートとリヒル各鉱山の保守作業が影響しました。こうした生産減により、高値が続く金価格の恩恵を十分に受け切れていないという指摘があります。実際、投資家はフリーキャッシュフローの弱さを懸念し、会社が水処理施設建設や解雇に伴う費用増により第4四半期のキャッシュフローが落ち込むと警告したことから、決算発表後の株価は時間外取引で2%下落しました。他の報道では株価が6%超下落したと伝えられるものもあり、生産見通しへの不安が株価の重荷となっています。

総合命題(ジンテーゼ): 高金価格局面を生かせるかが焦点

記録的な金価格が続くなか、ニューモントは高収益を上げる条件がそろっている一方で、生産の低下や設備投資の負担、非中核資産売却後の供給力減退が逆風となっています。平均販売価格の上昇が生産減少をある程度補っているものの、投資家は「金価格が4,000ドル超にある今でも思うようにフリーキャッシュフローを増やせないのなら、いつ増やせるのか」と懐疑的です。また、同社はニューレスト買収に伴う統合や資産売却を進めており、2026年の生産見通しを2025年の予想の下限にすると警告しています。経営陣は2026年以降の大規模プロジェクトへの投資やコスト抑制策が生産回復につながると述べていますが、その実現には時間がかかります。

要約

ニューモントの第3四半期決算は売上高55.2億ドル、調整後EPS1.71ドルと予想を大きく上回り、金価格の急騰が収益押し上げに寄与した。しかし、金の生産量は前年同期比15%減にとどまり、低品位鉱石や保守作業の影響で生産減が続いた。同社は水処理施設の建設費用などで第4四半期のキャッシュフローが減少すると警告し、株価は決算後に数%下落した。投資家は高金価格を背景にした業績拡大と生産減・コスト増という二つの要素をどう評価するかが焦点であり、ニューモントが今後生産回復と資産効率化を実現できるかが注目される。

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