米国の国債利払い費がスイス経済に匹敵する規模に — 防衛費・メディケアを超えた“見えない国家支出”

米国の財政年度(FY)2024年に、連邦政府が国債の利払いとして支出した「ネット利子」は約8,800億ドルに達しました。米政府の支出全体の約13%を占め、メディケア(約8,741億ドル)や国防費(約8,735億ドル)を上回り、社会保障に次ぐ2番目に大きな支出項目です。2020年の利払い費は3,450億ドル程度でしたが、金利上昇と借金の増加により、2024年にはほぼ3倍の8,820億ドルまで増えています。2024年の利払いは1日平均約26億ドルで、2025年は年間9,520億ドル、2026年には1兆ドルを超えると予測されています。米議会予算局(CBO)は、2026〜2035年の10年間に利払い総額が13.8兆ドルに達すると見込んでおり、これは同期間の国防費予測を4.3兆ドルも上回ります。

こうした巨額の利払い費を身近に感じてもらうため、いくつかの喩えを挙げます:

  • 国の規模に置き換える:スイスの2023年の名目GDPは約8,849億ドルです。これは米国が2024年に国債利子として支払った金額とほぼ同じです。つまり、米国は毎年、スイス経済全体に匹敵する金額を単なる利払いに充てていることになります。もし利払い費が一つの国だとしたら、世界20位前後の経済規模になるでしょう。
  • 科学技術予算に置き換える:NASAの年間予算は2024年・2025年とも約249億ドル(米国支出の0.3%)に過ぎません。利払い費8,800億ドルはこの約35倍にあたります。言い換えれば、米国は宇宙開発機関を30年以上も維持できる資金を毎年利子として失っている計算です。
  • 国民一人当たりに置き換える:ペーターソン財団によると、2024年の利払い費を米国の人口で割ると、1人あたり約2,600ドル(約40万円)を支払っている計算になります。さらに、2026〜2035年の利払い累計13.8兆ドルは国民1人あたり約40,500ドル(約620万円)に相当します。家族4人なら約16万ドル(約2,400万円)にもなり、家の購入資金に匹敵します。
  • 国防費との比較:2024年度の利払いは通年の国防支出(国防総省予算約8,420億ドル)を上回っており、2025年以降も格差が広がる見通しです。政府支出の優先順位が逆転し、利払いが社会保障や医療と並ぶ「巨額の事業」になっていることがわかります。

このように米国の国債利子は、スイスの経済規模に匹敵し、NASAの年間予算の35倍に上るほど巨大です。10年間で13.8兆ドルという利払い累計は、国民1人あたり約40,500ドルもの負担に相当し、政府の予算配分を圧迫しています。高金利と累積債務の拡大が続けば、この負担はさらに増大するため、財政健全化への取り組みが急務であることが実感できます。

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