テーゼ(命題)
金相場の急落は、中国政府が小売業者向けの付加価値税(VAT)控除措置を廃止したことが直接の原因である。11月1日から、上海黄金交易所などで仕入れた金を販売する際のVAT相殺が認められなくなり、高純度の金塊や延べ棒だけでなく、ジュエリーや工業用材料も対象になる。この新制度は景気低迷で税収が減る中で政府財源を補うためとみられるが、国内の金購入コストを上昇させ、世界有数の貴金属市場である中国の需要を鈍らせる可能性が高い。実際、ブルームバーグの報道では、こうした政策変更を受けて金価格が一時1オンス当たり4,000ドルを割り込み、アジア市場で1%下落したと伝えられている。このように、政策による需要抑制が金価格に波及するという見方がテーゼである。
アンチテーゼ(反命題)
しかし、金相場を支えてきた本質的な要因は依然として健在であり、税制変更の影響は一時的に過ぎないという見方もある。今秋の金価格急騰は世界的な個人投資家の買い意欲と中央銀行の買い入れが主因で、価格は10月初めに過去最高値を更新した。投資信託からの資金流出やインドの季節性需要の終了、米中関係の緩和などによって相場が急落したものの、金は依然として安全資産としての魅力を保っている。多くの専門家は、米国の利下げ観測や世界的な不確実性が続くことで、今後1年以内に金価格が5,000ドルに接近する可能性があると指摘する。つまり、政策変更による短期的な調整はあっても、金市場全体を押し下げる力は限定的との見解がアンチテーゼである。
ジンテーゼ(統合)
中国のVAT控除廃止は、消費者の金購入コストを押し上げ、短期的には需要を抑制する要因となることは否めない。しかし、金を支持する長期的な基礎要因―中央銀行の買い入れ、安全資産としての需要、世界的な金融緩和期待―は依然として強い。そのため、今回の政策変更は過熱した相場に冷や水を浴びせる調整として作用するものの、金市場の上昇トレンド自体を転換させるものではないと考えられる。むしろ、税優遇の廃止は、中国政府が公共財政と市場のバランスを模索している証左であり、国内需要の減速が確認されれば政策の再調整が行われる可能性もある。したがって、短期的な価格下落と長期的な上昇要因を統合すれば、金相場は変動を挟みながらも堅調に推移し、投資家には慎重かつ柔軟な対応が求められる。
要約
中国財政省は11月1日から、上海黄金交易所などで購入した金の販売時に小売業者が付加価値税を控除できる特例を廃止する。この措置は高純度の金塊や延べ棒、硬貨からジュエリーまで幅広い商品に適用され、政府財源の確保を狙う一方、中国の消費者には金購入コストの上昇をもたらしそうだ。報道によれば、政策発表後に金相場は一時4,000ドルを割り込みアジア市場で1%程度下落した。もっとも、金は依然として安全資産としての需要が強く、中央銀行の買い入れや米国の利下げ観測といった要因が価格を支えており、専門家は今後も上昇余地があると指摘している。

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