正(テーゼ):避妊は安全確保のために当然必要であり、常に実施されるべきだ
- 業界の安全慣行:疫学調査によれば、膣・肛門性交が行われるソープランドでは「コンドームの使用が標準」であり、口や手のみのサービスを行う他のヘルス店ではそもそも挿入がない。性的サービスに従事する従業員と雇用者には、性感染症と妊娠のリスクを減らすために避妊具を用いる共通認識がある。
- 公衆衛生上の勧告:厚生労働省助成の研究では、ソープランドなど“ハウス型”の事業者と従業員の間で、コンドームの正しい使用に合意が存在するが、その徹底が不十分であることが指摘され、 STD予防のために職業上・私生活の双方で避妊具を正しく使うことが推奨されている。感染症の増加を防ぐには、店が積極的に避妊具を提供し、教育を行うことが重要とされる。
- 倫理的配慮:従業員が健康を保ちながら働くには、客にも協力を求める必要がある。女性従業員を尊重し、安全なサービスに徹することが社会的に求められている。
反(アンチテーゼ):法的には避妊義務は存在せず、現場では必ずしも守られていない
- 法制度の空白:風営法はソープランドを「浴場業施設で個室を設けて接触する営業」と規定し、本番行為(性行為)自体に言及していない。売春防止法は「売春行為」の場所提供者を処罰するが、客や従業員には罰則がなく、避妊具着用義務も定めていないため、コンドーム使用を強制する法的根拠がない。
- 自由恋愛の建前と“NS”店:風俗店のインタビューでは、店が用意する対策はコンドームの支給くらいで、実際には「ノースキン(NS)=コンドームを着用しない」キャストが増え、コンドームを外して射精する客に対しても口頭注意のみで済ませている店が多いと報告されている。店員は自己管理に任され、NS対応を断ると仕事を振ってもらえないという声もある。
- 違法行為ゆえ契約も無効:仮に店が「避妊具着用義務」や罰金を設けても、そもそも本番行為は売春防止法違反のため、そのような契約は公序良俗に反し無効であり、客に対して損害賠償を請求することは困難と弁護士は指摘する。現場では避妊具の有無に関わらず本番行為自体が違法というグレーゾーンにある。
合(ジンテーゼ):避妊の重要性は認識されているが、法的拘束力がなく実効性に欠ける
ソープランドでは、性感染症や妊娠を防ぐため避妊具の使用が望ましいと広く認識されている。しかし、日本の風営法や売春防止法は本番行為を前提としていないため、コンドーム着用義務を明記していない。その結果、多くの店ではコンドームの支給や着用が“推奨”にとどまり、競争激化や客の要望から無防備な“NSサービス”が増加している。また、本番行為そのものが違法扱いのため、店側が避妊のルールを設けても契約的効力が弱い。公衆衛生・労働者保護の観点からは、業界全体で避妊具の着用を徹底し、客にも教育を行う制度設計が課題として残る。
要約
ソープランドにおける避妊(コンドーム使用)は、性感染症や妊娠を防ぐために重要であり、従業員と雇用主の間で合意があるものの、現行法には義務規定がなく実効性が乏しい。風営法も売春防止法も本番行為自体を禁じているため、避妊具着用を強制する法的根拠がなく、店ではコンドーム支給や口頭注意にとどまり、「NS」サービスが増えている。したがって、避妊は義務というより業界の慣行に過ぎず、公衆衛生向上のためには規制と教育の強化が必要である。

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