個人所有マンションを法人に譲渡する際の消費税と税務全体像

個人から法人にマンションを譲渡したときの消費税

  • 非課税となる場合
    個人が自分や家族の住居として使っていたマンションを売却する場合は、事業としての取引ではないため建物にも消費税は課されません。土地は常に非課税です。したがって、個人所有の自宅マンションを法人に譲渡しても、建物・土地ともに消費税はかかりません。
  • 課税となる場合
    賃貸マンションや店舗などの事業用物件を売却する場合には、その建物部分が事業者による資産の譲渡に該当し、消費税の課税対象となります。法人に売るかどうかではなく、売主が事業者かどうか(免税事業者を除く)と物件の用途が居住用か事業用かで課税の有無が決まります。

不動産取得税・登録免許税以外にかかる主な税金

税金概要税額の目安・要件
印紙税売買契約書に収入印紙を貼って納付する国税。契約金額1千万円超〜5千万円以下の場合、標準税率は2万円だが、令和9年3月31日までの軽減措置により1万円で済む。2,000万円の契約では印紙税は1万円(軽減措置適用)。
譲渡所得税・住民税マンションを売って利益が出た場合、その譲渡所得に対して所得税と住民税が課税される。所有期間が5年超の長期譲渡所得の税率は所得税15%、住民税5%。5年以下の短期譲渡所得では所得税30%、住民税9%。復興特別所得税(所得税額の2.1%)も上乗せされる。自宅の売却には3,000万円の特別控除などの特例がある。売却益が出た場合に課税。購入費や仲介手数料などを差し引いて計算するため具体額は個々に異なる。
固定資産税・都市計画税毎年1月1日時点の所有者に対して課税される地方税。売却年は売主が先に納税し、引渡し日を基準に日割りで精算するケースが多い。土地と建物の固定資産税評価額に所定の税率を掛けて算出。
消費税(売主が課税事業者の場合)個人でも賃貸用や事業用マンションを譲渡する場合は建物に対して10%の消費税が課税される。土地部分は非課税。売主が課税事業者かつ事業用物件の売却時に発生する。
その他費用司法書士手数料や仲介手数料など各種費用に対しても消費税が課される。契約内容や依頼先により変わる。

2,000万円で譲渡する場合の税額例(概算)

前提
中古マンション(個人が自宅として所有していたもの)を法人に売却するケース。譲渡価格は2,000万円で、土地・建物の内訳は一般的なマンションの比率(土地30%・建物70%)とし、固定資産税評価額は時価の70%と仮定。住宅用軽減措置を利用できるものとする。

不動産取得税

  • 建物部分
    建物価格1,400万円の70%=980万円が固定資産税評価額と仮定。中古住宅の軽減控除額は建築時期が平成9年4月1日以降なら1,200万円なので、評価額より控除額の方が大きく、課税標準は0円となる。結果、建物の不動産取得税は0円となる。
  • 土地部分
    土地価格600万円の70%=420万円を評価額と仮定。住宅用土地は評価額の半額に3%を掛けて計算するので、税額は420万円×½×3%=63,000円。ただし、控除額は4万5千円または土地1平方メートル当たりの評価額×½×「住宅の課税床面積×2」×3%のいずれか大きい方が適用される。一般的なマンション(床面積80㎡程度)では控除額が税額を上回るため、結果的に土地部分の不動産取得税も0円となることが多い。

不動産取得税の合計:0円(多くの中古マンションでは建物・土地ともに軽減措置により課税されない)。

登録免許税(所有権移転登記)

住宅用の軽減税率を適用すると、所有権移転登記の税率は土地1.5%、建物0.3%。時価を基準に概算すると次のとおり。

  • 土地部分:600万円 × 1.5% = 9万円
  • 建物部分:1,400万円 × 0.3% = 4万2,000円
  • 合計:約13万2,000円

住宅用軽減措置を受けるには床面積が50~240㎡などの要件を満たす必要がある。

印紙税

契約金額1千万円超〜5千万円以下の場合、軽減税率適用期間中(令和9年3月31日まで)は印紙税が1万円。標準税率は2万円だが軽減措置が適用される。

その他の税金・費用

  • 譲渡所得税・住民税:売却益が出る場合に課税される。所有期間が5年超なら所得税15%・住民税5%、5年以下なら所得税30%・住民税9%。復興特別所得税も加わる。自宅の売却には3,000万円の特別控除などの特例がある。
  • 固定資産税・都市計画税:年税で、売主と買主の間で日割り精算するのが一般的。
  • 消費税:仲介手数料や司法書士手数料には消費税が課される。賃貸用や事業用物件を売却する場合は建物部分の売却代金にも10%の消費税がかかる。
  • その他の費用:登記や各種証明書の取得費用などが発生することもある。

まとめ

  1. 個人の自宅マンションを法人に譲渡する場合、建物・土地ともに消費税は非課税。事業用物件を売却する場合は建物部分に消費税が課される。
  2. 不動産取得税は中古住宅の軽減措置を利用すれば、評価額が1,200万円以下の建物は課税標準が0になり、土地部分も控除により0円になるケースが多い
  3. 登録免許税は土地1.5%・建物0.3%の軽減税率が適用され、2,000万円の物件なら合計約13万円程度
  4. 不動産取得税・登録免許税以外の主な税金には印紙税(軽減税率で1万円)と、売却益が出た場合の譲渡所得税・住民税がある。固定資産税・都市計画税は毎年の所有者に課税され、売却年は日割り精算する。

以上が、個人所有マンションを法人に譲渡する際に考慮すべき消費税の取り扱いと、取得税・登録免許税以外にかかる主な税金の概要および2,000万円での概算例である。

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