源泉所得税額表の「乙欄」は、給与所得者がその勤務先に扶養控除等申告書を提出していない場合に適用される区分であり、副業やアルバイトなど従たる勤務先の給与が対象となります。乙欄の給与は、扶養親族の情報や他の所得情報が給与支払者に提供されないため、所得税の源泉徴収額が甲欄より高めに設定されており、基本的に年末調整の対象とはなりません。したがって、乙欄適用者は確定申告を通じて年税額を精算するのが原則です。
提示(テーゼ):乙欄適用者には年末調整が不要
年末調整は、給与所得者の一年間の給与総額と源泉徴収税額を調整し、過不足を精算する制度です。国税庁の「年末調整の対象となる人」では、年末調整は年末調整を行う日までに扶養控除等申告書を提出した一定の人に対して行うものと明記されています。乙欄に該当する人は扶養控除等申告書を提出していないため、この条件に該当しません。そのため、乙欄適用者の源泉徴収は暫定的な課税であり、実際の税額との精算は確定申告で行うことが制度の建前です。乙欄のまま年末調整を行うと、扶養控除の有無や他の所得を把握していないまま還付や追加徴収をすることになり、過不足が大きくなる可能性が高く、事務負担も増えるという実務上の課題があります。
反対(アンチテーゼ):乙欄でも年末調整すべき場合がある
一方で、乙欄だからといって無条件に年末調整を除外するのは単純過ぎるという指摘もあります。所得税基本通達190-2には、同一の給与支払者が年の途中で扶養控除等申告書を受け取り甲欄に変更した場合、それ以前に同じ支払者から支払われた乙欄給与も年末調整に含めて通算する旨が規定されています。また、前職で甲欄適用の給与を受けていた場合は、その源泉徴収票を提出して年末調整に含めます。こうした例外は、複数の勤務先や雇用形態の変化がある場合に、年税額を正確に計算するための措置です。加えて、乙欄の源泉徴収税率は高いため、確定申告をしなければ税金の過払いが続くという批判もあります。従業員にとって確定申告の手続きは煩雑であり、年末調整で一括精算できれば負担が軽減されるという見方も存在します。
統合(ジンテーゼ):原則不調整だが例外を踏まえた運用が必要
乙欄適用者について年末調整を行わないという原則は、税務手続の簡素化と事務負担の分担を目的とした合理的な設計です。勤務先が従業員全員の扶養情報や他の所得を把握できない以上、乙欄給与を年末調整に含めることには無理があります。その一方で、同一の支払者で乙欄から甲欄に切り替わった場合や、前職で甲欄だった給与を引き継ぐ場合など、法律や通達に定められた通算の例外が存在します。また、乙欄適用者自身が確定申告を行わないと過払いが解消されないため、勤務先は乙欄で源泉徴収している従業員に対して確定申告が必要であることを周知する責任があると言えるでしょう。
まとめ
源泉所得税額表の乙欄適用者については、扶養控除等申告書を提出していないという理由から基本的に年末調整の対象外とされ、確定申告によって税額を精算する仕組みです。ただし、同一の給与支払者で年の途中に甲欄へ変更した場合など、乙欄給与を年末調整に含める例外も認められているため、実務では状況に応じた判断が必要です。

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