北極の島はなぜ王国に属したのか:グリーンランドとデンマーク


序論

グリーンランドは北極圏に位置する世界最大の島であり、人口の約9割がイヌイット系です。しかし1953年にデンマーク領の一県とされ、1979年の自治法と2009年の自己政府法によって高度な自治が実現しました。ここでは、グリーンランドがデンマーク領となった経緯とその正当性・問題点を弁証法的に検討します。

正(テーゼ):歴史的にデンマークと結び付けられてきた

  • ノース人の入植と宗主権:10世紀後半、アイスランドから渡ったノース人がグリーンランドに定住し、ノルウェー王に臣従しました。その後デンマーク・ノルウェー連合王国が形成され、島は連合の一部となりました。
  • デンマークの再探検と植民地化:15世紀末にはノース人植民地が衰退しましたが、1721年に牧師ハンス・エゲデが宣教と貿易のため再探検し、デンマークの商業会社による独占体制を確立しました。
  • キール条約と国際裁判所判決:1814年のキール条約でデンマークがグリーンランドの主権を保持し、1933年には常設国際司法裁判所がデンマークの主権を支持する判決を下しました。
  • 1953年憲法改正と自治の進展:1953年にデンマーク憲法が改正され、グリーンランドは植民地から王国の一県へと編入されました。1979年の自治法と2009年の自己政府法で、内政の多くを自ら管理する権利が与えられました。

反(アンチテーゼ):植民地支配と民族自決の視点

  • 植民地主義と同化政策:デンマークの支配は交易独占やキリスト教化を伴い、先住民文化に大きな影響を及ぼしました。同化政策や集落統合により狩猟文化や言語が抑圧されたとの批判があります。
  • 経済的従属と独立運動:人口約5万7千人のグリーンランドはデンマークから年間約5億ドルの補助金を受けており、財政的に大きく依存しています。1979年以降、独立運動が高まり、自己政府法では住民投票による独立の権利が認められています。2023年には草案憲法も発表されましたが、経済的自立や対デンマーク関係を巡って議論が続いています。

合(シンテーゼ):歴史と自決を両立する視点

  • 歴史的連続性と法的承認の尊重:グリーンランドは長い間北欧王権と結び付けられており、国際法上もデンマークの主権が確認されてきました。
  • 先住民の権利尊重:自己政府法により外交・防衛を除く多くの権限が移譲され、将来の独立へ道が開かれています。文化と言語の保護は不可欠です。
  • 共生と経済的自立の推進:デンマークとの対等なパートナーシップを築き、資源開発や教育、環境保護で協力しながら自立を強化することが望まれます。
  • 独立時の国際的配慮:もし独立を選ぶなら、北極圏の安全保障や環境問題に関する国際協調が必要であり、デンマークも責任ある支援を続けるべきです。

要約

  • グリーンランドはヴァイキング時代から北欧王国に組み込まれ、1721年以降はデンマーク植民地として支配された。1814年のキール条約と1933年の国際裁判判決がデンマークの主権を確立し、1953年の憲法改正で正式にデンマーク領となった。
  • デンマークの支配は貿易独占や同化政策を伴い、先住民文化への影響や経済的従属を生んだ。自治法と自己政府法により独立への道が開かれているが、補助金への依存が大きく、独立論と慎重論が対立している。
  • 今後は歴史的連続性を認めつつ、先住民の自決権を尊重し、デンマークとの協力のもとで経済的・文化的自立を推進する共生モデルを構築することが重要である。

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