- 背景と目的 – 米国大型ハイテク株がグローバル株式指数を席巻する中、分散投資効果を高める手段として新興国株式と金が注目されている。双方とも先進国株式との相関が低いが、その役割やリスクは異なる。本稿ではその類似点と相違点を弁証法的に比較し、適切な組み合わせ方を検討している。
- テーゼ:両者の共通性(低相関による分散効果)
- 新興国株式:モーニングスターの2025年レポートによると、先進国株式より米国株との相関が低く、モーニングスター新興国欧州指数の3年相関は2021年末の0.82から2024年末には0.14まで急低下した。エネルギーや素材の比率が米国ほど高くないことや中国をはじめとする経済サイクルが異なることが低相関の要因とされる。10年前は先進国の1.5〜2倍あったボラティリティも、企業統治の改善などで収斂しつつある。2025年通年ではVIXに代表されるリスク指標が示す通り、新興国株式の相対的なボラティリティは米国株より低く、2024年半ば以降は絶対水準も歴史的平均を下回った。
- 金:ワールド・ゴールド・カウンシルは、金をポートフォリオに加えると他資産との一貫した低相関によりリスク分散効果が高まると指摘し、保険会社のポートフォリオに2.5%組み入れた場合シャープレシオが平均12%改善したと報告している。ステート・ストリートの2025年Q4白書では、過去30年にわたり金の主要株価指数や債券指数との相関はゼロに近いか負の値であり、ポートフォリオに2〜10%組み入れることで累積リターンとシャープレシオが向上し、最大ドローダウンも減少したことが示されている。S&P500が15%超下落した14回の局面で、金は平均5.89%のプラスリターンを記録した。さらに、金価格は1971年以降年率8.66%で上昇し、高インフレ時(CPI前年比5%超)には実質平均年率10.35%と株式や米国債を大きく上回った。
- アンチテーゼ:本質的な違い
- 新興国株式の限界:株式である以上、景気後退時やリスク資産売りで相関が上昇する可能性がある。ロシアのウクライナ侵攻後に新興国欧州株の相関が急変した例が示すように、地政学リスクの影響は無視できない。国ごとの政治体制や法制度のばらつきから政策変更や資本規制のリスクがあり、Altrinsicは2025年時点でもガバナンス不信が32%のPER割引に反映されていると指摘している。エネルギーや資源関連企業への集中や中国経済の影響も指数全体を左右する。
- 金投資の限界:金は配当や利息を生まないため価値評価が難しく、保険会社の一部は利回りを生まない資産として投資を見送っている。実体経済の成長に連動しないため強気相場では株式に劣後し、2008年の金融危機のような流動性危機では他資産同様売却され一時的に相関が上昇した。現物保有には保管・保険・監査コストが、ETFには信託報酬がかかる。
- ジンテーゼ:補完的な位置づけ – 表形式で整理されたまとめでは、新興国株式は成長ポテンシャルと地域・通貨分散を享受できる一方、企業統治や政治リスクが内包されるとされる。金はテールリスクヘッジ・インフレ耐性・流動性確保が主な役割で、キャッシュフローがない点や保有コストをデメリットとしつつも、他資産との相関がほぼゼロと記されている。両者の役割は相補的であり、相互に置き換え可能ではない。
- 投資戦略への示唆 – 新興国株式の低相関は産業構成や景気サイクルの違いに起因し長期的に持続する可能性が高い。金の分散効果は市場危機や高インフレ時に際立つ。新興国株式は株式配分内で地域・スタイル分散の手段として組み入れ、金は株式や債券とは別の資産クラスとして通常2〜10%程度配分することでポートフォリオ全体のリスク低減が図れる。両者を併用すれば、成長恩恵とディフェンシブ特性を兼ね備えた分散効果が得られ、ポートフォリオの堅牢性が高まる。
- まとめ – 新興国株式と金はいずれも米国中心の株式ポートフォリオに分散効果をもたらすが、性格は異なる。新興国株式は政策改革や企業統治の改善でボラティリティが先進国並みに低下し、米国株との相関も長期的に低下傾向にある。金は主要資産との相関がほぼゼロで、市場混乱や高インフレ時に価値を保つ安全資産として機能する。投資家は自身のリスク許容度と目的に応じて、新興国株式で成長期待を取り込み、金で資産保全とテールリスク対策を行うよう適切に組み合わせることが望ましい.
新興国株式と金:似て非なる分散投資の論理
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