高配当か成長か──ナスダック100カバードコール戦略


テーマの背景

ナスダック100指数には米国のテクノロジー企業を中心とした大型株が多く含まれ、株価の変動が大きい一方で成長性も高いとされます。この指数に対してカバードコール戦略を採用するETF(例:QYLD、JEPQなど)が近年人気を集めています。カバードコールとは、保有株式に対してコールオプションを売却し、プレミアム収入を得る戦略で、インカムゲインを強調した投資手法です。


テーゼ:ナスダック100カバードコール戦略を支持する立場

  • 安定したインカムと高利回り
    カバードコールETFは、保有する株式に対してコールオプションを売却し、そのプレミアムを毎月投資家に分配します。例えばQYLDは税引き前の分配利回りが約12〜13%と高く、長期にわたり安定した月次配当を支払ってきました。他のアクティブ運用型ファンドでも過去1年の利回りが約10%に達しており、従来の配当利回りを上回るインカムを提供しています。
  • ボラティリティに強い収益構造
    カバードコール戦略は、株式市場のボラティリティが高まるほどオプションプレミアムが増加するため、横ばい相場や下落局面で市場を上回る収益を得られる場合があります。また、一般的に通常の株式指数に比べて約30〜40%ボラティリティが低く、リスク調整後のリターンが改善するとの研究もあります。
  • ETFを通じた簡便な実行
    個人でオプション取引を行うには手間やリスク管理が伴いますが、ETFなら自動的にオプションを売却しプレミアムを受け取ってくれるため、投資家は株式を保有する感覚で定期収入を得られます。テクノロジー株に投資しつつ安定したインカムを求める投資家にとって、手軽で魅力的な手段となります。

アンチテーゼ:批判的な立場

  • 上値の制限と成長の放棄
    カバードコール戦略では、保有株の上値をオプションで売っているため、株価が大きく上昇した際にその利益を享受できないという機会損失が最大の欠点です。市場が急騰するとETFは大きく出遅れ、長期的な総合リターンが低下します。
  • 下落局面での限定的な保護
    プレミアム収入で損失の一部を補えるものの、株価の急落を十分に防ぐものではありません。実際、2020年に市場が大きく下落した際、カバードコール指数は通常の株式指数とほぼ同程度の下落を示し、その後の回復局面でも上昇分を取り逃しました。
  • 長期リターンの低迷
    QYLDの長期実績(2013年末〜2025年4月)では総合リターンが約7%に留まり、基準価額(NAV)は年率でマイナス3〜4%と下落しています。高配当を提供する一方で元本が減り続ける傾向があり、配当の多くが元本払い戻しである点も指摘されています。長期的な資産形成には不向きです。
  • 市場環境の選択性
    カバードコールETFは横ばいまたは弱含みの相場に最も適しており、長期的な強気相場では通常の株式投資に劣後します。毎月の収入は心理的な安心を与えるものの、実際には成長を放棄する機会損失の方が大きくなる可能性があります。
  • 税務および費用の問題
    オプションプレミアムは短期所得として扱われるため、他の長期キャピタルゲインより税率が高くなることがあります。また、カバードコールETFの経費率は比較的高く、長期的なリターンを削る要因となります。

ジンテーゼ:統合的な視点

ナスダック100のカバードコール戦略は、高配当という魅力と成長放棄の犠牲のバランスをどう取るかが鍵です。ボラティリティが高く横ばい〜下落局面ではプレミアム収入が基準価額の下落を部分的に補い、普通の株式投資を上回るリターンを得られる可能性があります。逆に、長期的な強気相場では株価上昇の恩恵を受けにくく、総合リターンに差が開きます。

したがって、ナスダック100カバードコールETFは、一定のキャッシュフローが必要で市場の大幅な上昇を期待しない投資家、あるいは短〜中期的に相場が横ばいまたは軟調と見込む局面でインカムを確保したい投資家に適しています。一方、長期的な資産成長を重視する投資家や米国テクノロジー株の強気見通しを持つ投資家は、カバードコール戦略をポートフォリオの一部に限定し、主軸は通常の株式や指数連動型ETFに置く方が合理的です。

近年は、日次オプションを用いたり上値を完全に放棄しないアクティブ戦略など、従来の月次カバードコールの欠点を補おうとする新しい手法も登場しています。投資家はこうした選択肢を検討し、自身の目的や市場環境に応じた戦略を採用することが望まれます。


要約

  • カバードコール戦略は株式を保有しつつコールオプションを売ることでプレミアム収入を得る方法であり、ナスダック100に採用すると高いボラティリティを利用して年10〜13%程度の高利回りを実現できる。
  • ボラティリティの高い横ばい〜下落局面では、プレミアム収入により通常の株式投資をアウトパフォームする可能性がある。
  • 一方で株価上昇時のリターンを放棄するため、長期的には通常の指数投資に劣後する傾向があり、急落局面でも損失を完全に防げない。
  • 税負担や経費率の高さも長期リターンを抑制し、配当の多くが元本払い戻しである点も注意が必要。
  • 高配当を求める投資家にとって有用だが、長期成長を犠牲にする側面があるため、ポートフォリオの一部として利用し、他の資産との分散を図ることが重要である。

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