概念の整理
刑事訴追は、検察官が公訴を提起し維持する行為であり、起訴よりも広い概念として捜査・起訴・公判を含めた刑事手続全体を意味する。他方、刑事告訴は犯罪被害者などの告訴権者が捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示の手続きである。
法的背景と主体の違い
刑事訴追の主体は検察官であり、警察は第一次捜査、検察官は起訴・不起訴を決定する。検察官が訴追の必要を判断した場合に起訴が行われる。刑事告訴は被害者や一定の親族などの告訴権者が行い、犯罪事実と処罰意思を申告することで成立する。
手続きと効果
刑事訴追は検察官が証拠に基づき公訴を提起し、裁判を進める手続きである。訴訟条件を欠く場合や親告罪で告訴が取り消された場合などは不起訴となる。刑事告訴が受理されると捜査機関には捜査義務が生じ、検察官は起訴・不起訴の結果を告訴人に通知しなければならない。親告罪では告訴がなければ起訴できないため、告訴が訴追の前提となる。
弁証法的考察
弁証法に沿って考えると、国家訴追主義(検察官が訴追権を独占する立場)と、被害者の処罰要求に基づく告訴制度は矛盾しつつ補完し合う。国家訴追主義の下では検察官が社会秩序維持の観点から訴追を行う。告訴制度は被害者が処罰意思を表明し捜査・訴追を促すもので、親告罪では告訴がなければ公訴提起できない。両者は刑事手続きの異なる段階を構成し、検察官が公共性を、告訴が被害者の意向を反映することで、公正と効率のバランスを図っている。
まとめ
刑事訴追は検察官が公訴を提起・維持する国家の権限であり、刑事告訴は被害者などが捜査機関に処罰意思を伝える手続きである。親告罪では告訴がなければ訴追できないため、告訴が重要な要件となる。弁証法的に見ると、国家による訴追権の独占と被害者の処罰要求という二つの要素は対立しながら統合され、刑事手続において公共性と個人の権利を調和させる役割を果たしている。

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