日本の法人税法では、短期的な価格変動で利益を得る目的で取得した金・銀・白金などは「短期売買商品」に区分され、期末に市場価格で時価評価し、その評価益・損を所得計算に組み入れることが義務付けられています。含み益であっても期末の評価益が益金に算入されるため、金価格が上昇している局面では実際のキャッシュフローがないのに納税資金が必要となり、機関投資家が金を敬遠する一因になっています。
金は利息や配当がない上に保管・保険料がかかり、ファーストイーグル・インベストメントは「最も保守的な金保有方法だが必ずしも最もコスト効率的とは言えない」と指摘しています。さらに、バーゼルⅢのネット安定調達比率(NSFR)では銀行が保有する金に85%の安定調達資金を求めており、金が流動性カバレッジ比率(LCR)の適格資産に含まれていないことから、金融機関のバランスシート上のコストが増大しています。
金は配当や利息を生まないため、利回りのある株式や債券に資金を配分した方が税務上の繰延効果も含めて有利と判断する機関投資家が多く、評価益課税があると金価格上昇局面で実効税率が上昇し、他資産との比較で劣後します。また、金価格の変動が大きく期末評価損益が業績の振れをもたらすことから、損益計算書の安定を重視する機関投資家は評価損益の変動を避けたいと考えがちです。
一方で、世界ゴールド協会やLBMAは金が信用リスクを持たない資産で、株式や他のリスク資産と逆相関になりやすいため分散効果が高いと説明しています。ファーストイーグルの調査では、機関投資家の約20%が既に金を保有し、さらに40%近くが今後金への配分を増やす意向を示しているといいます。安全資産需要の高まりやインフレ、地政学リスクへの備えとして金を評価する投資家も少なくありません。
税務面では、金を短期売買目的で取得しなければ短期売買商品に該当せず、期末評価益課税が生じません。長期保有目的の棚卸資産や有価証券として取得すれば、買付時と売却時のみ課税されます。金ETFや金連動投資信託を利用すれば譲渡益が発生するまで課税されず、投資信託は分離課税の対象となるため税率が安定します。さらに、NISAなどの税制優遇口座で金ETFに投資すれば運用益が非課税になり、年金基金や大学基金といった免税主体では評価益への課税を受けないため、米欧の一部の年金基金は金を保有しています。
総合すると、日本の法人税法に基づく短期売買商品の時価評価課税や、金の利息・配当なし・保管コストといった要因、バーゼルⅢのNSFRで求められる安定調達資金85%などが機関投資家にとって金保有のハードルになっています。しかし、金が0%リスクウェイトを与えられていることや他資産との低い相関を踏まえると、適切な投資手段(長期保有、ETF、金鉱株やロイヤルティ企業など)を選ぶことで税効率や流動性を確保しつつ、ポートフォリオにおける安全資産としての役割を持たせることも可能です。

コメント