ロシア資産凍結以後の世界:米ドル・金・BRICSの力学


テーゼ:金の支配と米ドル離れが進む

  • リブミント紙やIDNFinancialsの報道によれば、BRICS加盟国(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)とそれに連携する国々は、金産出量の約半分を占めており、2020~2024年に中央銀行が購入した金も全世界の50%以上に達した。ロシアと中国は380トン・340トンと突出した産金国であり、ブラジルも2025年9月に金を買い増した。
  • こうした「二重戦略」は金の生産と備蓄を同時に強化するもので、各国は米ドル建て資産を減らしながら金の保有を増やしつつある。国際貿易で自国通貨を使う取り組みも進み、ドル依存を減らす姿勢が鮮明になっている。
  • その背景には、ロシアの外貨準備の凍結に象徴される政治リスクがある。BRICSの専門家は、金が「政治的に中立な資産」であり、制裁に対する耐性を持つと強調する。金は実物資産であり保管場所を自国に置けるため、ドル資産の差し押さえリスクを回避できる。

アンチテーゼ:金支配や脱ドルの限界

  • BRICSが支配しているのは「生産」ベースでの比率であり、世界の既存金備蓄の50%を保有しているわけではない。各国の金準備は合計で6,000トン強に過ぎず、米国や欧州の中央銀行を含む先進諸国と比較すると依然大きな差がある。
  • 金は利息を生まず、保管や保険にコストがかかるうえ、価格変動も大きい。短期流動性が必要な外貨準備において、米国債やドル資産ほど使い勝手が良いとは言えない。大量の金を保有しても、為替介入や対外支払いにすぐ使えないため、完全なドル離れは難しい。
  • BRICS内部でもスタンスは一様でない。ロシアや中国は金を積極的に買い増しているが、南アフリカは価格上昇による評価益が中心で新規購入は少ない。ブラジルは金保有比率が6%程度にとどまるなど、経済構造や資本市場の発展度によって金偏重を避ける国もある。

シンセシス:多極化への布石としての金戦略

  • BRICS諸国・連携国が金の生産と備蓄を強化する背景には、米ドル一極集中のリスクに対する警戒と、制裁や地政学的対立に備えた準備がある。ロシア資産凍結は各国に衝撃を与え、政治的に中立な資産である金の重要性を再認識させた。
  • とはいえ、金が外貨準備の中心になるわけではなく、ドル建て資産や他通貨債券とのバランスが必要である。IDNFinancialsは、BRICSの専門家が金戦略を「リスク管理と多様化の一環」と位置付けていると報じる。ドルの役割を急速に弱めるのではなく、金融システムの多極化を目指す長期的な動きと見るべきだ。
  • 今後も米ドルは主要な国際通貨であり続けるだろうが、BRICS諸国が金と自国通貨の役割を拡大することで、リスク分散の幅が広がり、金融安全保障の面で柔軟性が高まる。その結果、世界の通貨システムは一極集中から多極化へとゆるやかに移行し、金がその補完的な柱として機能する可能性がある。

要約

BRICS諸国と連携国は金の生産・保有を強化し、2020~24年に中央銀行が購入した金は世界の過半に達した。これはドル資産凍結のリスクが鮮明になったためで、金を政治的に中立な資産・制裁耐性のある資産とみなし、ドル依存を減らす「二重戦略」を採っている。ただし金は利息を生まず流動性も低いため、各国の保有比率や戦略は一様ではない。金の積極的な積み増しは、米ドルを完全に代替することではなく、外貨準備の多様化とリスク管理の一環であり、世界金融システムの多極化を進める動きと理解すべきである。

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