自己資金投資は金融業か:産業分類の錯覚

自社の資金だけで上場株式や社債といった有価証券を保有し、売買益や配当を得る事業は一見すると「証券の売買」を行っているので金融業の一種に見えます。しかし、産業分類では金融業は、銀行や証券会社のように資金の貸付け・預金・仲介・他人の資金の運用など“金融の仲介機能”を担う事業が中心と考えられています。

この観点から考えると、自社の資金のみを用いて有価証券に投資する事業は、外部の投資家から預かった資金を運用するわけでもなく、有価証券の売買の媒介を行うわけでもありません。金融商品取引法の登録が求められるのは、他人の資金を取り扱う投資運用業や証券会社の自己売買(ディーリング)業務の場合であり、自己資金の範囲で行う投資は投資家保護の対象外とされています。このため、行政手続き上も証券会社や投資顧問のような免許は不要であり、金融庁の規制対象にはなりません。

日本標準産業分類の立場からみると、他企業の株式を持ち、それに付随する利益を得ることを主目的とする企業は「純粋持株会社」として位置付けられます。この分類は学術研究・専門・技術サービス業に属し、経済産業省の分類表でも「サービス業(他に分類されないもの)」に該当します。実務上も、年金機構や税務署に提出する業種区分では、有価証券の保有・売買を事業目的に掲げる会社は「専門サービス業/サービス業」と記載するのが一般的です。

したがって、自社資金の範囲で行う有価証券の保有・購入・売却事業は、金融機関のような資金仲介業ではなく、会社の資産管理を目的とした「純粋持株会社」「資産管理会社」としてサービス業に分類されます。なお、他人の資金を集めて運用し利益を分配する場合は金融商品取引業に当たるため、この区別には注意が必要です。

要約:

  • 金融業とは本来、他人の資金を預かり運用する銀行や証券会社など資金仲介機能を持つ事業を指す。
  • 自己資金だけを用いて株式や債券を買い、保有・売却する行為は金融の仲介ではなく単なる資産運用であり、金融商品取引法の登録対象外。
  • 日本標準産業分類では、他社株式を保有して収益を得る企業は「純粋持株会社」とされ、サービス業(専門サービス業)に区分される。
  • よって、自社の資金で有価証券を保有・売買する事業は、一般的には金融業ではなく、純粋持株会社や資産管理会社としてサービス業に分類される。

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