利上げでも上がる金:逆相関を超える6つの構造要因

  • 実質金利の影響 – 金価格は名目金利ではなく、名目金利からインフレ率を差し引いた「実質金利」の動きに敏感である。PIMCOの分析では、実質利回りが1%上昇すると金価格(インフレ調整後)は約18%下落するという結果が紹介されている。利上げで名目金利が上がってもインフレ率がそれ以上に高ければ実質金利は低いままで、金の機会費用は増えにくい。
  • 安全資産需要 – インフレ懸念や経済不安・地政学リスクが高まると、株式や債券が下落する一方で信用リスクのない金への需要が増えやすい。2008年の金融危機や2020年の新型コロナ禍では投資マネーが金に流入して価格が急上昇した例が挙げられている。米国が2022年から急速に利上げを行った際も、実質利回りが高水準にあったにもかかわらず金価格は下落が限定的で、翌年には上昇に転じたという分析が成り立つ。
  • 米ドル相場の影響 – 金は米ドル建てで取引されるため、ドルが弱含むと他通貨建ての購買力が高まり金需要が増える。米国の財政不安や金融政策への懸念から2026年のドル相場は上値が抑えられる可能性があり、ドル安が続けば利上げ局面でも金価格を支える要因になり得る。
  • 中央銀行・投資家による需要 – 世界の中央銀行は外貨準備の約20%を金で保有しており、とくに新興国の中央銀行が買い増しを進めている。2022年の中央銀行による純購入量は1,082トンと過去10年平均の2倍以上に達し、2023〜2025年も勢いが続いた。金ETFなどの投資需要と合わせて、利上げによる機会費用の上昇を相殺している。
  • 将来の金融政策の織り込み – 金価格は現在の利上げよりも将来の金融政策の見通しに敏感で、利上げ局面でも市場が将来の利下げや金融緩和を織り込むと金が買われやすい。Fedが高金利維持を続けていた2025年前半に金が将来的な利下げ転換を織り込んで上昇し始めたと考えられる。
  • 歴史的な例 – 過去の米国利上げ局面(1994年、1999年、2004年、2015年)では利上げ開始前に金が下落したものの、利上げ後3か月から2年後には平均で上昇する傾向があった。2022〜23年の急速な利上げ時には一時的に金が下落したが、インフレ懸念と地政学リスクにより回復し、2023年末には過去最高値付近まで上昇した。さらに2024〜25年は高金利が続いたにもかかわらず、債務上限問題や中央銀行買いなどにより金価格が4,000ドルを超える局面もあった。
  • まとめ – 一般に金と金利は逆相関関係にあるが、実質金利が低い、経済・地政学リスクが高い、ドル安が進行している、中央銀行や投資家の需要が強い、あるいは市場が将来の利下げを織り込んでいるといった条件が重なると、利上げ局面でも金価格が上昇することがあると結論付けている。

このように、金価格は利上げのみで一方向に動くわけではなく、インフレ率や実質金利、世界経済の安定性、ドル相場、中央銀行の動向など複数の要因を総合的に分析する必要があると強調されています。

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