命題(テーゼ)—金利上昇は避けられないという見方
日銀は2025年12月に政策金利を0.75%まで引き上げ、2026年1月の会合でも据え置きながら「需要と物価の動向次第でさらに引き上げる」と表明した。インフレ率は2025年12月でも総合2.1%・コア2.4%と2%目標を上回り、約4年連続で物価目標を超える状態が続いている。2月のIMFは「インフレが2%を上回る状態が続いており、金融緩和の解除は適切」と述べ、2027年までに中立金利へと近づくよう追加利上げを推奨している。さらに、ロイターが2月に実施したエコノミスト調査では、回答者の58%が政策金利は6月末までに1%へ上昇すると予測し、一部は4月にも利上げがあると見ている。政策金利の上昇とともに実質成長率の改善期待、財政拡張によるインフレ圧力、円安防止の必要性もあり、金利のさらなる上昇は不可避とする見方がある。
反命題(アンチテーゼ)—慎重論と抑制すべき理由
一方で、物価動向には減速の兆しもある。東京都区部の2026年1月消費者物価指数は前年同月比1.5%と2年3か月ぶりに2%を下回り、エネルギー補助金や燃料税率の引き下げによってコアコアインフレ(生鮮食品・エネルギーを除く)は2.4%まで鈍化した。ロイターの別の調査でも1月の全国コアCPI上昇率は2.0%程度に減速したと予想され、ガソリン価格の下落や食料品値上げの鈍化が要因とされている。INGの分析は「賃上げと4月CPIの結果を見極めてから6月に0.25%の追加利上げを行う可能性が高い」と指摘し、物価と賃金の基調が弱まれば慎重に構えるべきだとしている。急激な金利上昇は住宅ローンや企業借入の負担を高め、内需を冷え込ませるリスクがあり、政策当局は景気減速や賃金の拡大ペースに目配りする必要がある。
また、日本の公的債務残高は世界最大であり、IMFは「金利上昇により債務利払いが2025年から2031年にかけて倍増する」と警告している。消費税減税などの財政拡張策は借金負担を増大させ、国債市場の不安定化を招きかねないため、IMFは「財政政策の追加的な緩和は控えるべきであり、低所得層への支援は的を絞った形で行うべき」と提言している。このような財政制約を考慮すると、金利上昇を抑え財政健全化を優先する議論も根強い。
総合(ジンテーゼ)—政策調整と構造改革の重要性
上記のような相反する主張を統合すると、「緩やかな正常化」と「構造改革」が鍵となる。物価が2%付近で持続している以上、世界的な金融政策の引き締めとの差を埋め、円安による輸入物価高を抑えるために日銀は段階的に金利を上げる必要がある。実際、Trading Economicsは日銀の長期予測として2027年までに政策金利が約1%まで上昇する可能性を示している。しかし、インフレ減速の兆しや賃金交渉の行方を見極めつつ、急激な引き締めは避けなければならない。高市政権は大型補正予算や消費税の一時的減税を掲げているが、IMFは税減免による財政余裕の侵食を懸念しており、成長支援と財政健全化のバランスを取ることが求められる。
さらに、潜在成長率が1%に届かない日本では、金利政策だけでなく労働市場改革やイノベーション促進など構造的な政策が不可欠である。IMFは労働移動の促進と生産性向上を通じて賃金の持続的な伸びを実現する必要性を強調している。金利が上昇する環境では、企業や家計が負担に耐えられるよう、所得向上と成長戦略を同時に進めることが重要となる。
結論
日本の金利を巡る議論は、物価高と円安に対処するための正常化圧力(命題)と、インフレ鈍化や負債負担を考慮した慎重論(反命題)の対立として整理できる。両者を統合した「総合」としては、日銀は状況を見極めながら段階的に利上げを進め、政府は財政拡張策を節度あるものに抑えつつ、構造改革によって潜在成長率と賃金上昇を高めるという選択肢が浮かび上がる。こうした総合的な政策対応によって、金利上昇がもたらす副作用を抑えながら、経済の持続的な発展を目指すべきである。

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