2036年償還の「NEXT NOTES 金先物ダブル・ブル ETN」は、日経・JPX金指数の2倍に連動するETNであり裏付け資産を持たない。そのため満期に投資元本が返済されるかどうかは、発行体ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンス・エヌ・ブイおよび親会社の野村ホールディングスの財務健全性に大きく依存する。野村グループの信用力が大きく毀損すれば、指数がどれだけ上昇していても償還価額が著しく毀損またはゼロになるリスクがある。
正(好材料)—信用力は現時点で安定的
- 2026年1月公表の2025/26年度第3四半期決算では、純収益が前年比7%増の5,518億円、税引前利益1,352億円(前四半期比1%減)を計上し、株主資本利益率(ROE)は目標レンジ(8〜10%)の上限10.3%に達した。資産運用・ホールセール等4部門合計の税引前利益は1429億円で過去18年半で最高水準に達し、財務体力は着実に強化されている。
- デジタル資産子会社レーザーデジタルにおける暗号資産市場の急落で約100億円の損失が出たが、CFOはポジション管理を強化して損失拡大を防ぐ措置をとったと説明し、2025年10〜11月の急落後はポートフォリオを縮小して短期的な変動を抑える方針を打ち出した。同社はレーザーデジタルが立ち上げから2年で黒字化したと強調しており、暗号資産事業の規模はグループ全体に比べてまだ小さい。
- 野村グループの信用格付けはR&I「A」、JCR「AA-」、Moody’s「Baa1」、S&P「BBB+」(アウトルック正面)、Fitch「A-(安定的)」と投資適格圏にあり、格付機関は収益基盤の拡大と資本の健全性を評価している。S&Pは2023年にアウトルックを安定的からポジティブに引き上げ、リスク調整後資本比率が今後8〜9%を維持すると見込んでいると報じられている(出典:各種報道)。JCRも2025年12月に野村ヨーロッパ・ファイナンスのEMTNプログラム格付けを「AA-安定的」で確認している。
反(悪材料)—リスク要因と過去の大型損失
- デジタル資産事業の損失は今後も継続的なボラティリティリスクを孕む。2025年10月の暗号資産急落ではビットコインが7%下落、その他主要アルトコインは20〜27%と大きく下落し、一部は70%近く下落した。Nomuraは暗号資産のマーケットメイクや資産運用を手掛けており、より大きな暴落があれば損失が拡大する可能性がある。
- 野村は過去にもリスク管理の不足から大きな損失を経験している。2021年3月のファミリーオフィス「アルケゴス・キャピタル」破綻では、株価連動型スワップ取引に伴う融資でおよそ20億ドルの損失が発生し、株価が1日で16.3%下落した。こうした事例は過度なレバレッジ取引への関与が巨額損失を招くことを示しており、同社のリスク管理体制が将来の市場ショックにも完全に耐えうるかは不透明である。
- 2025年にはオーストラリアの資産運用会社の買収に伴う費用と欧州での損失がかさみ、四半期利益が前年同期比で約10%減少する場面もあったと報道されている(出典:各種報道)。大型買収や新規事業への投資は収益多角化に寄与する半面、一時的な利益圧迫やのれんの減損リスクを伴う。
合(総合評価)—ETN償還価額毀損の可能性
弁証法的に考えると、野村グループは十分な利益水準と投資適格の信用格付けを維持しており、2026年1月には600億円の自社株買いを発表するなど資本余力を示している。デジタル資産部門の損失は現時点では限定的で、リスク管理が強化されていることから短期的に財務が大幅に悪化する可能性は低い。一方で、暗号資産などボラティリティの高い事業やレバレッジ取引への関与、海外企業買収といった活動は大きな損失を招くリスクをはらむ。2021年のアルケゴス事件のような予想外の顧客破綻や市場ショックが再び起きれば、数千億円規模の損失が発生し、自己資本の目減りや格付けの引き下げによって資金調達コストが急騰するおそれがある。格付けが投資不適格まで低下すれば、2036金ダブルブルETNの償還価額が毀損する可能性も否定できない。
したがって、現在の情報では野村グループが財務悪化によってETNの償還価額が毀損するリスクは低いものの、ゼロではなく、投資家は以下の点に留意するべきである。
- グループの財務状況を定期的に確認し、格付けやROEの推移、デリバティブ損失など信用リスクに影響する要因を監視すること。
- デジタル資産やレバレッジ取引の損失が急拡大した場合、発行体の信用力が低下する可能性があり、その際は早期償還や償還価額の毀損リスクが高まる。
- 長期保有よりも短期的に金先物の価格上昇を狙う用途に限定し、信用リスクを十分に認識した上で投資を行うこと。
野村が引き続き安定した収益基盤と厳格なリスク管理を維持する限り、2036金ダブルブルETNが償還価額を毀損するほどの財務危機に陥る可能性は低いが、市場や事業環境の変動により状況は変化し得るため注意が必要である。

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