アファーマティブ・アクション

用語

アファーマティブ・アクション(Affirmative Action)とは、社会的に不利な立場にある集団(例:人種的・民族的マイノリティ、女性、障がい者など)の社会的地位を向上させ、機会の平等を促進するために実施される積極的な差別是正措置のことです。

1. アファーマティブ・アクションの目的

  • 歴史的不平等の是正: 過去の差別や不平等の影響を緩和する。
  • 機会均等の確保: 教育、雇用、政治参加などにおいて、多様な人々が公平に競争できるようにする。
  • 多様性の推進: 企業や大学などの組織で多様な視点を確保し、社会全体の包括性を高める。

2. アファーマティブ・アクションの主な手法

  • 大学入試での優遇措置: 特定のマイノリティ出身者に対する加点制度や入学枠の確保(例:米国の大学入試における人種配慮)。
  • 雇用機会の拡大: 企業や政府機関が特定のグループを積極的に採用・昇進させる(例:女性管理職の割合を増やす施策)。
  • 公共契約における優遇: 政府がマイノリティ経営の企業に契約を優先的に与える。
  • 政治的代表の確保: 選挙制度で特定のグループに議席を割り当てる(例:インドのカースト制度に基づく留保制度)。

3. アファーマティブ・アクションの議論

肯定的な意見

  • 公平性の回復: 過去の差別の影響を是正し、真の機会均等を実現する。
  • 社会の多様性向上: 異なる視点を持つ人々が増え、組織の創造性や競争力が向上する。
  • 経済的格差の是正: 貧困層の社会進出を促し、格差の縮小につながる。

否定的な意見

  • 逆差別の可能性: マイノリティを優遇することで、他のグループが不利益を被る。
  • 能力主義への影響: 学業成績や実績ではなく、出身や属性による優遇が本来の実力主義を損なう可能性がある。
  • 不公平感の増大: 既に差別が緩和された場合、不必要な措置として反発を招くことがある。

4. アファーマティブ・アクションの国際的事例

  • アメリカ: 大学入試や雇用の場で長年実施されてきたが、近年は「逆差別」との批判が強まり、一部州では撤廃された。
  • インド: カースト制度の影響を減らすため、公務員や大学入試で「留保制度(Reservation)」を導入。
  • フランス: 公共政策としては人種を基準にした措置は少ないが、貧困地域の学生を支援する形で実施。
  • 日本: 明確なアファーマティブ・アクションは少ないが、女性の管理職比率向上や障がい者雇用促進策などが類似の取り組みとして行われている。

5. 近年の動向

2023年、アメリカの最高裁判所が大学入試におけるアファーマティブ・アクションを違憲とする判決を下し、人種を考慮した入試制度が廃止される動きが加速。今後の世界的な議論の焦点となっている。


アファーマティブ・アクションは、社会的正義と公平性をめぐる重要な議論の一つであり、国や時代によってその評価や実施方法が変化しています。

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