1. 欧州経済の特徴
- 欧州は約5億人の市場を抱える巨大経済圏。世界GDPの15〜20%を占める。
- 高成長は見込みにくく「万年低成長」だが、安定性と市場規模の大きさが強み。
2. ドイツ経済の不振
- 欧州最大の経済国ドイツが停滞。要因は以下:
- エネルギー危機:ロシア産の安価な天然ガス輸入が途絶し、エネルギー価格が高止まり。産業競争力が低下、化学産業を中心に海外移転(空洞化)が進む。
- 自動車産業の苦境:中国市場でEV化に出遅れ、地場メーカーにシェアを奪われる。
- 財政緊縮の副作用:長期的な投資不足でインフラ老朽化、新産業育成も遅れ。
3. 米国との関税摩擦
- 米国はEUに15%の関税を課すことで合意。自動車・医薬品・機械などが対象。
- 欧州企業には負担増だが、報復関税合戦を回避できた点で「最悪は免れた」と評価。
- 協議決着により投資の先送りが解消され、経済活動再開の期待も。
4. 財政拡張とユーロ高
- ドイツが歴史的な財政転換。インフラに10年間で5,000億ユーロ、国防費もGDP比3.5%へ拡大。
- EU全体でも共同債発行などで国防支出を後押し。
- 財政拡張期待でユーロ高が進行。米国への信認低下も資金流入を後押し。
- インフレは収束傾向。政策金利は中立水準に近づき、利下げは打ち止めの可能性。
5. 雇用と社会不安
- 失業率全体は低下して過去最低水準。
- ただし若者失業率は14〜18%台と高止まり。労働市場の硬直性が背景。
- 生活コスト高や移民流入も不満を助長し、極右・ポピュリズム政党が台頭。
- ドイツのAfDやフランスのルペン党など、主要国でも勢力拡大。EU離脱論は英ブレグジットの反省から弱まったが、政治リスクは増大。
6. グリーン政策の軌道修正
- 脱炭素方針は維持するが、防衛費増で財政余力が削がれ調整が必要。
- 産業競争力や財政制約を踏まえ、柔軟な運用が模索されている。
まとめ
欧州経済は「低成長だが安定」という構図を保ちつつ、ドイツの停滞と政治不安が大きなリスク。
一方で財政拡張と防衛強化への政策転換は市場の期待を集め、ユーロ高や内需回復につながっている。
今後は 安全保障・気候政策・政治安定性のバランス が焦点となり、日本にとっても欧州との連携は重要性を増していく。
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