正:肯定的見解
- 歴史的に民主党政権下で株高傾向:過去の米国株式市場では、民主党政権期の平均リターンが共和党政権期を上回るというデータが報告されています。例えば、ある経済分析では1927~2015年の米国株式(S&P500)の超過リターンは民主党政権で年平均約+10.7%だったのに対し、共和党では約-0.2%と約11%の大差があるとされています。このような差は統計的にも有意で、「大統領パズル」と呼ばれてきました。また、戦後期(1946年以降)をみても、選挙後1年間のS&P500リターンは民主党当選時のほうが共和党当選時よりおおむね2倍に達するとの分析例もあります。実際、オバマ、クリントン、トルーマン、ルーズベルトなど民主党政権下で株価が大きく上昇した例が多く、表面的には政党交代が株高と関連した印象を与えています。
- 政策期待と景気循環との関係:支持派の間では「民主党は財政出動傾向が強く、景気が良くなれば企業業績も向上し株価が上がる」「共和党は増税・緊縮傾向で株価に厳しい」といった見方があります。また、政策期待や規制緩和への期待で、政権交代時に特定セクターが急騰する例も見られます。例えば、クリーンエネルギーやヘルスケアなど、民主党が有利視される選挙後にはそれら関連株価が上昇しやすいとする指摘があります。これらを根拠に、政党交代が株式市場全体にポジティブな波及効果をもたらす可能性があるとする見方があります。
反:否定的見解
- 長期的には政党による差は限定的:多くの専門家は「政党ではなく経済ファンダメンタルが株式市場を動かす」と指摘します。実際、エドワード・ジョーンズなどの分析では、近年のトランプ(共和党)政権とバイデン(民主党)政権下でS&P500の年率リターンはほぼ同率(約14%)であり、10年後の長期リターンも両党で約7%と近似しています。過去80年以上の統計でも、どちらの党が勝っても好調期と不調期は交互に現れており、単純に党派だけで株価に有意差はないという意見が強いです。
- 研究による慎重な見方:最新の調査分析では、「当選党派は株価パフォーマンスにほとんど影響しない」との結果が出ています。ある資産運用研究では、1928年以降の24回の大統領選挙後の株価動向を日次ベースで解析し、『選挙が接戦かどうか』のほうが勝者が共和党か民主党かよりも影響が大きかったと報告されています。接戦時は投票直前に株価が落ち込み、その後当落確定で上昇するパターンが顕著で、党派自体に意味は見出せなかったという結果です。
- 独自分析でも有意差なし:政党交代があった選挙年とそうでない年の翌年S&P500トータルリターンを比較すると、仮に政党交代があった年の翌年平均約+13%、無かった年の翌年は約+11%という小さな違いがあります。しかし標準偏差も大きく、統計的検定では両者間に有意な差は認められませんでした。さらに米国外でも左派政権・右派政権で株価パフォーマンスの有意差は見られないとする報告があり、政治の左右やその交代自体が直接的なリターン要因とは言い難い状況です。
合:統合的見解
- 景気サイクルとの同調:民主党・共和党がそれぞれ選ばれるタイミングの違い(景気周期の段階など)が株価変動の鍵であり、党派そのものが直接因ではないと考えられています。例えば、民主党が選ばれやすいのは景気後退期でリスク回避志向が高い時期であり、逆に共和党は景気拡大末期に選ばれる傾向があります。そのため「民主党=株高」の統計が出ても、それは大統領選が好景気局面で行われて大きく上昇したためと解釈できます。実際、歴史的にみると民主党政権下でも1970年代後半のカーター期には株価は低迷しましたし、共和党政権下でも1950年代のアイゼンハワー期や1980年代・1990年代後半には株価は堅調でした。
- 不確実性の解消が先行する:選挙の注目度や接戦度合いが高いほど、市場のボラティリティは増大しやすいです。選挙前は不透明感で下落し、当選が決まると安堵から上昇する「不確実性解消」パターンが見られます。この場合も勝者の党派というより、結果が出て不確実性が解けたこと自体が株高要因といえます。新政権の政策期待は短期材料になり得ますが、実際に行われる政策は議会構成や世界経済、金融政策に制約されるため、長期的には市場の本質的ファンダメンタルが優先されます。
- 総合的判断の重要性:以上を踏まえると、「党派が変われば株価が必ず良くなる(または悪くなる)」という単純な見方は危険です。政党交代時の株価変動には複数の要因が交錯しており、むしろ現状の経済指標や金融環境、各党の政策内容を慎重に吟味することが重要です。過去の実例でも、党派ごとに「株高・株安の典型例」がそれぞれあり、結局はファンダメンタル(景気や金利、企業業績など)が長期的には決定的でした。
要約
- 歴史データでは民主党政権下の株価リターンが高い傾向が指摘されるが、これは景気局面の違いによる可能性が高い。
- 一方、長期的には党派による株価への影響は有意ではないとする分析も多い。市場は経済状況や不確実性の変化に反応しており、党派自体だけでは説明できない。
- 結論として、政党交代による株価への直接的な優劣関係は確立しておらず、投資判断にあたっては選挙以外の経済要因や政策内容を重視すべきである。
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