米国連邦政府の一部閉鎖と公務員解雇の動き

公務員大量解雇の方針の背景(テーゼ)

  • 財政再建と行政効率化
    現行の歳出予算法案を巡る対立で米連邦政府の一部が 2025 年 10 月から停止し、各省庁は予算切れの中で職員の給料や事業費の支払いができない状況に陥っている。行政管理予算局(OMB)は、政府機能を最低限維持するために各省庁へ人員削減方針を示し、大規模なレイオフを想定した事務手続きを進めている。アルジャジーラの報道によれば、政府閉鎖中は約 75 万人の公務員が一日あたり約 4 億ドルの給与を受け取れない見込みであり、OMB は 9 月 24 日のメモで各省庁に 「大規模な人員整理を準備せよ」 と指示した。
  • 予算管理の範囲内での正当な業務
    公共サービスの維持には優先順位づけが不可欠であり、非必須の事業や重複する業務を見直すことは行政管理予算局本来の仕事である。必要不可欠な職員(生命・財産保護に直接関係する職種)は無給で働き続けるが、それ以外の職員については furlough (一時休職)や整理を行って予算の健全化を図るしかないという判断である。

政治的・社会的懸念(アンチテーゼ)

  • 大規模レイオフによる生活・経済への影響
    furlough は一時的な休職で後で賃金が支払われるが、OMB メモが言及した「大規模レイオフ」は permanant な解雇を含む可能性がある。これは 2019 年の法律で保障される「後払い」の対象外となり、労働者が復帰できないケースを生み出す。アルジャジーラは、この閉鎖で 75 万人が毎日休職し、非正規職員や契約職員は補償を受けられないと指摘している。
  • 政治的報復の疑い
    ロイターの記事によれば、トランプ政権は閉鎖を機にニューヨークの交通インフラ等民主党主導のプロジェクトを含む約 260 億ドルの資金を凍結し、「数日以上続けば解雇を実行する」と宣告した。これは公共事業を人質に取り、与党に属する州や職員を狙い撃ちにしていると批判されている。民主党のシューマー院内総務は「国民を駒にしている」と非難し、労働組合や野党は閉鎖が行政効率化よりも政治的な嫌がらせだと受け止めている。

統合的視点(シンセシス)

  • 行政効率化と政治的公平性の両立
    歳出削減や効率化は必要だが、大規模な解雇はサービス低下と景気悪化を招き、政治不信を拡大させる。OMB の役割は各省庁の予算評価と効率化策の提示であり、解雇・休職の決定権は各省庁にある。したがって、政府は短期的には furlough の利用にとどめ、長期的には人員配置や不要な事業の見直しを民主・共和両党の合意のもとで行うべきである。
  • 代替案と協調の必要性
    失業者の急増を避けるため、議会は短期的なつなぎ予算で政府業務を再開させ、医療保険の削減撤回や財源確保策については継続協議するべきである。また、支出削減だけでなく税制改革や成長戦略も併用して赤字を抑える必要があり、一方的なプロジェクト停止や政治的制裁は長期的な財政再建を阻む要因になりかねない。

要約

米連邦政府は予算法案の対立により 2025 年 10 月に部分的に停止し、OMB は各省庁に大規模なレイオフの準備を求めている。これは歳出抑制と行政効率化を目的とするが、閉鎖中は約 75 万人の職員が休職し、多くの契約職員が無給となるなど生活への打撃が大きい。さらに、政権は民主党主導のプロジェクトへの資金提供を凍結し、数日以上の閉鎖が続けば解雇に踏み切ると警告している。財政再建は必要だが、政治的理由によるレイオフは社会的混乱を招く。議会はつなぎ予算で政府機能を回復させ、両党協調の下で公務員や国民生活を守りながら長期的な財政健全化策を検討すべきである。

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