AIブームをどう捉えるか──ガンドラック氏の「ツルハシとスコップ」論を巡る弁証法

ガンドラック氏のAI銘柄に関する発言は、AIブームをどのように投資に落とし込むべきかという議論の出発点となる。彼は、利下げが進む環境で米国株全体に魅力を感じないものの、AIが社会に大きなインパクトを与えるとの認識を持ちつつ、その恩恵に与る方法として「ツルハシとスコップを売る側」を重視した。この考え方は「ゴールドラッシュで一番儲かったのは金を掘った人ではなく採掘のための道具を売った人だ」というたとえに基づいている。

正論(テーゼ):道具提供者を重視する投資戦略

ガンドラック氏のテーゼは、AIの普及には莫大な電力やコンピューティングインフラが必要であり、その部分は需要が確実であるという点に置かれている。AIサービスが成功するか否かに関係なく、データセンターの電力供給や半導体の供給は必ず必要になる。したがって、インフラ関連企業や電力会社に投資することで、AIブームが続く限り安定した需要を享受できると考える。この視点に立てば、原発の再稼働や再生可能エネルギーへの投資が進むエネルギー企業、データセンター向けの高効率チップを生産する半導体メーカーなどが恩恵を受けるだろう。

反論(アンチテーゼ):純粋なAI企業の成長力

一方で、AIサービスそのものに投資しないことは、ブームの中心的な利益を取り逃すリスクもある。AIは単なる計算ツールではなく、生産性を飛躍的に高める可能性を持つ技術であり、生成AIや自動運転などのソフトウエア企業が新たな収益源を開拓する。クラウドプラットフォームやAIアプリケーションを提供する企業は、サービス利用者の拡大とともに高いリターンが期待できる。また、電力会社やインフラ企業は規制の影響やエネルギー価格の変動リスク、設備投資のための高額な資本負債などがあるため、必ずしも安定的とは言い切れない。AIブームが短期的にピークを迎えた場合、電力需要が想定通りに伸びず株価が下落する可能性もある。

統合(ジンテーゼ):バランス投資の重要性

両者の議論を踏まえると、AIブームを生かす投資戦略としては「道具を売る側」と「サービスを提供する側」の両面をバランスよく組み合わせることが有効だと言える。AI関連半導体メーカーやデータセンター建設企業、再生可能エネルギー企業などの基盤企業に投資すると同時に、急成長するAIサービス企業にも分散投資することで、ブームの恩恵を最大化しつつリスクを抑えられる。また、ガンドラック氏が指摘するように、過度な期待で株価が上昇している場合にはバリュエーションと将来需要を冷静に評価し、バブル崩壊の可能性を念頭に置く必要がある。

要約

AIブームで利益を狙う際、ガンドラック氏はゴールドラッシュのように「道具を売る側」に注目し、電力やインフラ企業への投資を提唱した。これはAIサービスの成功に依存せず安定した需要を捉える戦略だが、純粋なAI企業は急成長の可能性があり、リスクを取れば高いリターンが見込める。最終的には、両者を組み合わせたバランス投資が現実的であり、過熱した相場に警戒しつつ長期的な技術普及を見据えることが重要である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました