正 – インフレ上昇下での利下げ批判
ガンドラック氏は、米連邦準備制度理事会(Fed)が9月のFOMCで9か月ぶりに政策金利を0.25%引き下げたことに疑問を呈している。インフレ率は前年同月比2.9%と上昇傾向にあり、トランプ政権が導入した関税が物価へ与える影響は今後大きくなると見ている。彼のモデルでは関税がインフレ率を0.5ポイント押し上げる可能性があり、インフレ率は3%台半ばに達する可能性がある。そうした中で利下げを続ければ、通貨安とさらなる物価上昇を招き、レイ・ダリオ氏の予測する「米国債務解消のための通貨安政策」へ向かう恐れがあると論じている。また、2年物米国債の利回りが政策金利を0.65%下回っており、市場は追加の利下げを織り込んでいることも懸念材料として挙げた。
反 – 金融緩和を支持する立場
これに対して、金融緩和を支持する立場からは別の見方がある。Fedの声明では、経済活動の伸びが鈍化し、失業率が上昇しているため、景気と雇用を支えることが必要とされた。インフレ率は2.9%と上昇傾向にあるものの、エネルギーや食品を除いた基調インフレ率は3.1%であり、物価指数の月次上昇率は0.2~0.3%と落ち着いている。さらに、パウエル議長は関税の価格への影響が予想よりも緩慢で小さいと説明している。労働市場の弱さを考えれば、過度な引き締めはリセッションを引き起こす恐れがあり、緩やかな利下げが妥当だとする意見も多い。
合 – バランスのある視点
両者の主張を総合すると、今後の金融政策には慎重なバランス感覚が求められると言える。関税の影響や財政赤字による通貨安圧力からインフレが上振れするリスクは無視できないが、労働市場が弱含みであることも事実である。2年債利回りが政策金利より低いことは市場が景気減速を意識している証拠とも受け取れる。そのため、Fedは物価上昇と雇用状況を見極めながら緩やかな利下げを行い、インフレが想定外に上振れした場合には軌道修正する柔軟性を保つべきである。
要約
ガンドラック氏は、関税による物価押し上げを踏まえ「今後インフレが3%台半ばに達するのにFedは利下げを続ける」と警鐘を鳴らした。一方、失業率上昇など景気減速が顕著なため、緩和を支持する意見も根強い。両者を踏まえると、Fedはインフレリスクと景気悪化リスクの両方に目配りしながら慎重に政策を運営する必要がある。
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