テーゼ:体力の衰えと頭脳への転換
成人の体力は20代にピークを迎え、30代を過ぎると10年ごとに5〜10%ほど低下するとの医学研究があり、特に40歳を過ぎると体力の下降カーブが急になると指摘されます。このため、若い頃は多少の無理が利いた現場や肉体労働も、40代以降は疲労回復が遅くなり、怪我のリスクも高まります。社会では多くの人が「40過ぎれば手数(体力)では若者にかなわない」と実感し、体力任せの働き方が困難になるため、経験や知識を生かした頭脳労働へ移行して責任を果たすべきだという主張が生まれます。マネジメント論の父ピーター・ドラッカーも、知識を用いて価値を創出する「知識労働者」の重要性を説き、知識労働は体力に左右されにくいとしました。そのため、年齢を重ねても自己研鑽を続け、意思決定や組織運営に貢献できる頭脳労働へ軸足を移すことが合理的と考えられています。
アンチテーゼ:体力低下は必然ではなく、頭脳労働にも限界がある
一方で、体力低下は絶対的なものではありません。厚生労働省の調査でも、運動習慣を持つ人は加齢による体力低下を大幅に抑制できると報告されています。40代・50代でも筋力トレーニングや有酸素運動を取り入れれば、若い頃より高い体力を維持する例もあります。加えて、頭脳労働が必ずしも楽とは限らず、長時間の集中や精神的負荷によって心身が疲労する「知的疲労」も存在します。知識労働者が成果を出すには専門知識だけでなく洞察力・コミュニケーション力が必要で、誰もが簡単に転換できるわけではありません。また、若くして組織を運用する側で稼げる人は一握りであり、大多数は経験や人脈の蓄積が必要です。早期に頭脳労働へシフトすると、現場感覚を失い、組織の実情を理解できなくなるという批判もあります。
ジンテーゼ:身体と知性の両立を前提に多様な働き方を組み合わせる
40代以降に体力が低下しがちなのは事実ですが、それを理由に体力を軽視したり、知識労働だけに偏るのは適切とは言えません。体力の維持は健康と生活の基盤であり、適切な運動と休養を継続すれば、現場での活動も無理なくこなせます。頭脳労働に移行する場合でも、現場との接点を保ち、肉体労働者や若者の視点を理解することが組織運営には不可欠です。若くして経営や起業に挑戦するのは魅力的ですが、基礎的な現場経験や協働スキルの蓄積があってこそ持続的な成果が得られます。結局のところ、年齢や職種に応じて心身の健康管理と知識の向上を両立させ、多様な働き方を柔軟に組み合わせることが、長期的に職責を全うし、成長し続けるための鍵となるのです。
要約
40代を過ぎると体力の低下が顕著になることから、経験と知識を生かした頭脳労働へシフトするのが合理的だとされる。しかし、運動習慣によって体力低下は抑えられる上、頭脳労働も精神的負荷が大きく誰もが簡単に成果を出せるわけではない。若くして組織運営側に回る選択肢もあるが、現場経験や健康管理を疎かにすべきではない。身体のケアと知的研鑽を両立し、年齢や状況に応じて柔軟に働き方を変えることが重要である。
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