前期までは有価証券の売買損益を損益計算書の「経常損益(営業外収益・営業外費用)」に計上していたものを、当期から「売上高」「売上原価」に振り替えるケースを想定した場合の個別注記表に記載すべき「表示方法の変更に関する注記」の具体例

注記作成に当たってのポイント

  • 表示方法の変更は、資産・負債や損益の認識・測定に変更が無い場合に該当し、会計方針の変更とは区別されます。
  • 表示方法を変更した場合は、変更の内容・組替えた理由・組替えた過去の金額を注記することが必要です。過年度財務諸表は新しい表示方法に従って組替え、注記では組替え後の金額を明示します。
  • 重要性が乏しい場合は注記省略も認められますが、今回のように科目の表示区分が変わり損益計算書の構成が変わる場合は注記を行うのが一般的です。

「表示方法の変更に関する注記」の記載例(文章例)

7.有価証券売買損益の表示方法の変更
当社は、当期より有価証券売買事業を主要な営業活動と位置付けたため、損益計算書における有価証券売買損益の表示区分を変更いたしました。
従来は、有価証券売買益を「営業外収益」に、有価証券売買損を「営業外費用」に含めて表示しておりました(前事業年度の有価証券売買益…△△△百万円、有価証券売買損…▲▲▲百万円)。
しかし、当事業年度より、有価証券売買が主たる営業活動となったことから、有価証券売買による収入を「売上高」に、対応する費用を「売上原価」に計上する表示方法へ変更いたしました。
この表示方法の変更を反映させるため、比較情報として示している前事業年度の損益計算書の表示を組み替えております。具体的には、前事業年度の営業外収益に含めていた有価証券売買益△△△百万円を売上高へ、営業外費用に含めていた有価証券売買損▲▲▲百万円を売上原価へ組み替えました。
この変更は、資産・負債および損益の認識や測定に変更を伴わないため、表示方法の変更に該当します。本変更による営業利益、経常利益および当期純利益の金額には影響はありません。

注記作成時の留意点

  • 注記の冒頭に「○○の表示方法の変更」と標題を付け、変更対象科目を明示します。
  • 従来の表示方法(前期までの科目と金額)を示し、変更後の表示方法とその理由を記載します。
    • 例:前事業年度は営業外収益(有価証券売買益△△△百万円)・営業外費用(有価証券売買損▲▲▲百万円)に含めていたが、当期から売上高・売上原価へ表示区分を変更した。
  • 組替え後の金額を示します。前期比較情報を再表示している場合は、組替え後の金額も注記します。
  • 表示方法の変更が認識・測定の変更を伴わない旨を明記し、そのため過年度財務諸表を組替えていることを説明します。

このように記載することで、投資者や利害関係者が表示方法変更の内容や理由を理解しやすくなり、比較可能性が確保されます。

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