テーゼ:金鉱株を支持する理由
- 利下げ局面の追い風 – 米国は2026年に利下げへ転じると予想されており、金利低下は株式全体にとって追い風となる。過去の分析でも景気後退を伴わない利下げ時期にはS&P500が平均13%上昇しており、金鉱株にも恩恵が期待される。
- 金価格の強さと需要要因 – 2025年は地政学リスクや中央銀行・ETFからの強い需要に支えられ、金価格が大幅に上昇し、1オンス4,000ドルを突破した。J.P.モルガンは、この需要が続けば2026年末には平均5,055ドル/オンスに達する可能性があると予測している。
- 金鉱株の出遅れと回復 – 2024年は燃料費や労働コストの上昇、高い実質金利などで金価格に対して出遅れたが、2025年には原油安や資材コストの安定で採算が改善し、多くの鉱山会社がフリーキャッシュフローを創出、配当や自社株買いが可能になった。その結果、主要な金鉱株指数は年初から約89%上昇し、金価格の44%を上回った。
- 利下げの恩恵の仕組み – 利下げによる実質金利の低下はプロジェクトの割引率や資金調達コストを下げ、開発段階の鉱山プロジェクトの価値を高める。金鉱株は金価格に対してレバレッジを持つため、金価格が一定水準を超えると利益が急増し、上昇余地が大きい。
アンチテーゼ:金鉱株投資のリスク
- 企業固有のリスク – 金鉱株は金そのものではなく企業株式であるため、経営失敗や労働争議、環境規制などの影響を受ける。利下げが遅れたりドル高が続く場合、追い風は弱まる。
- 過熱感と引き締めリスク – 金属・鉱業株は2025年に60%以上上昇し過去最高値を更新しているため、短期的な調整が懸念される。インフレが再加速すると中央銀行が再び利上げに転じるリスクもある。
- ETFとの競合と資金動向 – 投資資金が金ETFに集中すると金価格だけが先行上昇し、鉱山株は出遅れる可能性がある。投資家心理が変わるとETFから資金流出し、金価格が急落するリスクも指摘されている。
- 採掘コストと環境規制 – 採掘には多額の資本と長期開発が必要で、金鉱業はエネルギー価格や労働賃金の上昇、ESG規制の強化などに敏感である。特に低品位鉱床の開発では採算ラインが高くなる。
ジンテーゼ:バランスの取れた見解
- 金鉱株への投資は、利下げによる実質金利低下・ドル安、ETFや中央銀行の金需要の継続が重なれば大きな利益をもたらす可能性がある。2025年にはコストの安定化とキャッシュフロー改善で金鉱株が金を上回るリターンを示した。
- 一方で、金鉱株は企業固有のリスクを抱え、金価格の急調整や政策転換の影響を受けやすい。金価格が先行して上昇する局面では出遅れやすく、レバレッジが裏目に出ることもあるため、純金ETFと金鉱株の組み合わせによる分散投資が賢明である。
- 投資家はポジションサイズや企業選択を慎重に行い、金市場のファンダメンタルズと金融政策を注視しながら長期的な視点で臨む必要がある。
全体のまとめ
米国が2026年に利下げに転じるとの予想のもと、実質金利低下とドル安は金の魅力を高め、金価格は上昇基調を維持しやすい。2025年にはETF・中央銀行の旺盛な需要に支えられ金価格が急騰し、金鉱株も原材料コストの安定化やフリーキャッシュフロー改善により出遅れを取り戻しつつある。ただし、金鉱株には企業固有のリスクや市場全体のボラティリティが伴い、短期的な過熱から調整が入りやすい。投資する場合は、金市場と金融政策の動向を注視しつつ、保有比率や銘柄選定を慎重に行うことが推奨されていました。

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