人口新陳代謝10%が示す、不動産収益の分水嶺

  • 新陳代謝率とは、年間の流入人口と流出人口の合計を総人口で割った指標であり、都市の活力を測る物差しとして用いられます。東京圏の分析では、人口の10%以上が毎年入れ替わるエリアでは地価の上昇率が高く、入れ替わりが少ないエリアでは空き家が増え地価の伸びが鈍いというデータが示されており、この観察から「人口の10%が入れ替わる都市ほど収益物件の成績が良い」との命題が導かれています。
  • 命題の肯定側では、住民の入れ替わりが多い都市では需要と供給が常に刺激され、空室が少なく賃料が上昇しやすいこと、流入・流出の多さが雇用機会や教育機関の豊富さを示し投資対象として魅力的であること、そして新陳代謝が高い都市では既存物件の改修や再生が進み価値が維持されやすいことが挙げられています。
  • 反対側の意見としては、人口の入れ替わりが激しいと地域コミュニティが希薄になり、防犯や子育ての面で課題が生じること、投資家が流入人口を見込んで物件を建て過ぎれば供給過剰により賃料下落や空室リスクが高まること、そして新陳代謝率は都市平均でありエリア間の違いを把握しなければ誤った判断につながることが指摘されています。
  • 総合的な考察では、10%という閾値はあくまで目安に過ぎず、ターゲット層や物件タイプ、地域コミュニティの魅力といった複数の要因を総合的に考慮すべきだとしています。単身者向けワンルームは人口流動性の高い地域が適し、一方でファミリー向けや高齢者向け物件は定住志向の地域が向いているため、投資家には適切なエリア選びが求められると述べています。
  • 地方都市のランキングについては、森記念財団の「日本の都市特性評価(Japan Power Cities 2025)」で東京23区を除いた都市の上位が紹介されています。上位には大阪市、名古屋市、福岡市、横浜市、京都市、神戸市、仙台市、金沢市、札幌市、つくば市が並び、長野県の松本市は12位にランクインしています。このランキングでは生活・居住分野が評価される都市が上位になりやすく、松本市は長野市より高順位となっています。
  • 伊東市・伊豆市・松本市の人口動態に関するデータもまとめられており、伊東市の人口は約6.4万人で入れ替わり率は約7.6%、高齢化率が高く賃貸需要は観光シーズンに左右されると記されています。伊豆市は人口約2.7万人、入れ替わり率は7.6%程度で、若年層の移住が少ないため賃貸需要は限定的であり地域資源の活用が課題とされています。松本市は人口約23.4万人、入れ替わり率は約7.9%で、生活環境が高評価されるためファミリー層やシニア層が定住しやすいことから長期賃貸運用に向いていると分析しています。
  • 総括では、人口入れ替わり率が10%を超える都市は賃貸需要が強く地価も上昇しやすいものの、流動性の高さにはコミュニティの希薄化や供給過剰といった負の側面もあるため、投資判断では複数の要因を総合的に評価する必要があるとまとめています。

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