勝者が入れ替わる市場:米国株・金・新興国を貫く循環の論理

テーゼ(米国株の“幸運の時代”)

  • 米国株の長期的な優位:S&P500は1871年以降のインフレ調整後配当再投資込みで年率7%超の成長を示し、1980年代以降のマルチプル拡大やIT・ハイテク分野の躍進に支えられて8〜12%台にまで上昇した(記事より)。これに加え、2009年以降の超金融緩和とイノベーションの波は米国に資金を集中させ、株価は10数年で10倍以上に跳ね上がった。長期的にみれば米国は世界最大の経済規模と革新的企業群を擁し、投資家に「運の良い場所」を提供してきた。
  • 経済・金融政策の追い風:2009年以降、FRBの低金利政策や量的緩和が続き、企業利益の拡大と株価の上昇を後押しした。低金利によるディスカウント率低下はPER拡大(マルチプル・エクスパンション)を招き、米国株のリターンは歴史的に高水準となった。
  • ドルの覇権と資本集積:米国は世界の基軸通貨を持ち、政治的・法的枠組みも安定しているため、世界の資本が流入しやすい。これが株式市場の流動性と適正価格形成を支え、投資家に「幸運の時代」をもたらした。

アンチテーゼ(米国株の“不運の時代”と代替資産)

  • 米国株にも“冬の時代”はあった:米国株は常に勝者ではない。1930年代の大恐慌期には株式が大幅に下落し、によると「株は酷い成績で、デフレ環境下では債券の方が好調」だった。2000〜2009年の「失われた10年」ではS&P500が年率マイナス1%と低迷する一方、米国外の新興国株が資金を集めた。モーニングスターは「2000〜2009年は米国市場が失速する一方、BRICSなど新興国が最も熱い資産クラスになった」と述べている。
  • インフレ期には実質リターンが大幅に低下:1970年代はスタグフレーションにより株価は名目で年率6%程度上昇したものの、インフレ率が7%を超えたため実質的にはマイナスだった。ドイツ銀行のリサーチは「1970年代は株と長期国債が実質ベースで損失を出す一方、金や銀など貴金属は強力な実質リターンを上げた」と指摘している。
  • 代替資産・地域の躍進
    • 大恐慌期の社債・債券:1930年代のデフレ環境では企業債券や国債が株式より良好な結果を残した。
    • スタグフレーション期の金・コモディティ:1970年代には金価格がBretton Woods体制崩壊と高インフレを受けて1980年1月に665ドルまで急騰し、デビッド・リサーチによると「貴金属は有効なインフレヘッジとなり、株・債券が落ち込む中で強い実質リターンを示した」。
    • ドットコム・バブル後の新興国・コモディティ:低金利と中国の高成長による「コモディティ・スーパーサイクル」に支えられ、ブラジル・ロシア・インド・中国(BRICs)などの新興国株が米国株を上回った。
    • 現在の欧州株の割安さ:WisdomTreeは2025年のレポートで「非米国株の割安度合いは米国株に対して約40%の割引率にあり、欧州株が注目されている」と説明し、ドイツ株などが米国株を上回るリターンを示し始めていると報告している。
    • 暗号資産の可能性:ビットコインなどは2013〜2023年に年平均230%のリターンを出し、2〜4%のポートフォリオ配分で全体リターンを向上させた期間が74%に上った。ただし、2025年時点でS&P500との相関が0.5に上昇し、ボラティリティが3〜4倍と高い点から、インフレヘッジ兼リスク資産として慎重な扱いが必要である。

ジンテーゼ(バランスと適応力を持った投資戦略)

  • “運の波”は読み切れない:米国株の長期的優位は否定できないが、歴史は「幸運の時代」と「不運の時代」が交互に訪れることを示している。景気後退や構造変化が起こるたびに資本は別の市場や資産クラスへ移動し、そこで新たなブームが生まれる。運の波を完全に予測することは不可能であり、「一点集中」は危険だ。
  • グローバル分散と資産クラス分散:株式中心の資産形成でも、米国・欧州・新興国といった地域分散や、株式・債券・金・コモディティ・暗号資産などの資産クラス分散を行うことで「不運の時代」に耐える体制を作ることができる。例えば、米国株が割高な時期には欧州株の割安さや新興国の成長、金のインフレヘッジ性を活かし、ポートフォリオの一部を移す選択肢がある。また、デフレやリスクオフ局面では高格付債券が資本保全に寄与する。
  • バリュエーションとマクロ環境をチェック:割安度合い(P/E)や金利動向、インフレ率、通貨の強弱などのマクロ指標を重視し、一定のリバランスルールを持つことが重要だ。WisdomTreeが指摘するように非米国株は米国株より約40%割安であり、このような大きなバリュエーション格差が縮小する局面は長期的な投資機会になりうる。
  • リスク管理と柔軟性:新しい資産(暗号資産など)は高い成長潜在性を持つ一方でリスクも大きい。アロケーションを限定し、ポートフォリオのボラティリティが許容範囲内に収まるよう調整する必要がある。市場が大きく変化した際には既存の投資観を見直し、時代の潮流に合わせた戦略へ柔軟に移行することが求められる。

まとめ(要約)

米国株は長期的に高い成長をもたらしてきたが、その優位は永続的ではなく、大恐慌期・スタグフレーション期・ドットコム後の「不運の時代」には低迷した。このような時期には債券・金・新興国株などが主役となった。2025年時点では米国株の高バリュエーションと欧州・新興国の割安さが意識され、金や暗号資産に対する注目も高まっている。投資家は「運の良い場所」が時代によって移り変わることを理解し、米国株に固執せず、地域や資産クラスの分散、バリュエーションの確認、リスク管理を通じて柔軟なポートフォリオを構築することが重要である。

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