日本は、中世ヨーロッパ人にとって「黄金の国ジパング」と呼ばれるほど、金銀が豊富な国として描かれました。テーゼとしては、佐渡金山や鴻之舞金山などの数々の金山が歴史的に莫大な金銀を産出し、江戸幕府の財政を支え、外国からの交易や冒険心を掻き立てたことが挙げられます。このイメージは、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に端を発し、大航海時代にコロンブスなどの探検家がアジア航路を求める原動力となりました。
しかし現実には、アンチテーゼとして、戦後の採算悪化や資源枯渇により多くの鉱山が閉山し、商業的な金鉱山は鹿児島県伊佐市の菱刈鉱山のみです。菱刈鉱山は鉱石1トンあたり30〜40gという世界屈指の金含有量を誇りますが、年間産出量は4トン余りで、過去の大鉱山に比べると小規模です。銅や亜鉛など他金属の鉱山も1990年代までに閉じ、現在は輸入が大半を占めます。一方で、世界的な金価格高騰と探査技術の進歩により、2025年には鹿児島の山ケ野金山で70年ぶりとなる高品位の金鉱脈が見つかり、旧鉱山の再開発が再び注目され始めています。
この両者を統合するシンセーゼとして、都市鉱山や海洋資源開発への期待が挙げられます。都市鉱山とは使用済みの電子機器や家電製品に含まれる金属資源を回収・再利用する取り組みで、例えばスマートフォン1トンには約300gの金が含まれています。こうしたリサイクルは天然鉱石の60倍もの濃度を持ち、環境負荷が低いことから注目されています。さらに、日本の広大な排他的経済水域には海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト、レアアース泥などの海洋鉱物資源が確認され、国の調査船「白嶺」によるボーリング調査や資源評価が進んでいます。これら新たな資源利用や再資源化の技術は、歴史的な「黄金の国」というイメージと資源枯渇の現実を架橋し、持続可能な資源確保への道筋を示しています。
要約
- 歴史的背景:佐渡金山などが大量の金を産出し、「黄金の国ジパング」の伝説が生まれた。
- 現代の現実:多くの鉱山が閉山し、商業規模で稼働するのは菱刈鉱山のみ。銅や亜鉛等の国内鉱山は撤退し輸入依存が強い。
- 新たな動き:金価格高騰と技術進歩で山ケ野金山など旧鉱山の再開発や高品位鉱脈の発見が報じられている。
- 今後の展望:都市鉱山によるリサイクルや海洋鉱物資源の開発が、資源の枯渇と環境負荷の課題を克服し、日本が再び資源大国となる可能性を示している。

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