二院制の思想と現実:米国議会と日本国会の構造比較

米国の議会は憲法第1条で定められた二院制の立法機関で、人口に基づく下院(House of Representatives)と各州の平等な代表からなる上院(Senate)から構成されます。両院が同一法案を可決しなければ法律にならない点は共通ですが、選出方法や任期、権限に大きな違いがあります。

米国議会の構造

下院 (House of Representatives)

  • 定員 – 50州の人口に比例して割り当てられる435議席に、投票権を持たない6人の代表(ワシントンD.C.と米領5地域)が加わる。
  • 選出と任期 – 2年ごとに改選され、各議席は単一選挙区の候補者が最多得票で当選する(単純小選挙区制)。候補者は25歳以上・米国籍7年以上・選挙区の州在住であることが必要。
  • 権限 – 予算関連法案(歳入法案)の起案や連邦公務員の弾劾訴追、選挙人団で決着がつかない場合の大統領選出など独自の権限を持つ。下院の議事運営は厳格で、討論時間や修正案の範囲が制限される。

上院 (Senate)

  • 定員 – 各州から2人ずつ計100人。州の人口にかかわらず同数を配分するため、小州も大州と同じ発言力を持つ。
  • 選出と任期 – 6年任期で2年ごとに全体の約3分の1が改選される。候補者資格は30歳以上・米国籍9年以上・当該州在住が必要。
  • 権限 – 大統領による閣僚・判事・大使など重要人事の承認や、条約の批准を担当し、下院が弾劾訴追した連邦公務員の裁判を行う。上院には討論時間の制限がなく、議事を長引かせる「フィリバスター」が行われることがある。議事を強制的に終わらせるには出席議員の5分の3(60人)によるクローチャー決議が必要とされる。

日本の国会と米国議会の比較

日本の国会も衆議院(下院)と参議院(上院)の二院制で、法案成立には両院の可決を要します。ただし憲法と国会法により衆議院が参議院より強い権限を持ちます。

下院同士の比較(米国下院 vs 日本衆議院)

項目米国下院日本・衆議院
定員435名+投票権のない6名465名。小選挙区から289名、11ブロックの比例代表から176名を選出
任期2年、解散なし。全議席が偶数年に改選4年だが首相の解散権や不信任決議で短縮される
選挙制度単純小選挙区制。人口に比例した選挙区割り小選挙区と比例代表の並立制。比例区は単独リストで全国区とは別に11ブロックに分ける
候補者資格25歳以上、米国籍7年以上25歳以上の日本国籍者
権限の特徴歳入法案の起案、連邦公務員の弾劾訴追、選挙人団同数の場合の大統領選出予算・条約・首相指名で参議院より優越し、参議院が法案を否決しても衆議院が3分の2以上で再可決すれば成立

米国下院は全議席を一度に改選するため、政治的に不安定になる可能性がある反面、2年ごとに有権者の意思を反映しやすい。日本の衆議院は4年任期だが、首相が解散するといつでも総選挙になるため平均寿命は約3年と短く、政治情勢に敏感である。また、衆議院は参議院より強い権限を持ち、予算案や条約、首相指名で参議院の反対を乗り越えられる。

上院同士の比較(米国上院 vs 日本参議院)

項目米国上院日本・参議院
定員各州2名で100名248名。45都道府県選挙区から74名、全国比例代表から50名を選出し、改選ごとに124名が選ばれる
任期6年任期で2年ごとに1/3を改選6年任期で3年ごとに半数改選。院自体は解散されない
選挙制度州単位の小選挙区(1州2議席)で多数派勝利、任期が重なるため選挙は6年周期都道府県ごとの中選挙区で単記非移譲制を用い全国比例区と併用。定数は比例100・地方148へ改正
候補者資格30歳以上、米国籍9年以上30歳以上の日本国籍者
権限の特徴大統領が指名する閣僚・判事・大使などの承認、条約批准、弾劾裁判。討論時間に制限がなく、議事妨害のフィリバスターが可能で、討論打ち切りには60票が必要法案や条約の審議・承認を行うが、予算・条約・首相指名では衆議院に優越権があり、衆議院の3分の2以上の再可決で参議院の拒否を覆せる。衆議院解散中の緊急集会など独自の役割もある

米国上院は州の平等を保障するために全州同一議席数で構成され、任期も長く、議事進行も比較的柔軟である(フィリバスターによる長時間討論など)。日本の参議院も解散されない常設の院ですが、衆議院に比べ権限が弱く、主に法案の審議や政府監視、緊急集会による暫定的措置など「熟議の府」としての役割が強い。

両国制度の総括

  • 制度趣旨 – 米国では「人口」と「州」の利益を均衡させるために二院制を採用し、上院にも強い権限を与えています。一方、日本は議院内閣制の下で衆議院を中心に政治を運営し、参議院は抑制・修正機能を担う立場に置かれています。
  • 任期と解散 – 米国下院の任期は2年固定で解散がなく、選挙周期が明確です。日本の衆議院は任期4年ですが解散が容易で、政権戦略の一環として選挙が行われます。米国上院と日本参議院はともに6年任期で任期が重なる形で改選されるため継続性がある。
  • 権限のバランス – 米国上院は下院とほぼ対等の立法権を持ち、条約批准・人事承認など独自の強力な権限が付与されています。それに対し、日本参議院は衆議院に優越される分野が多く、可決遅延や修正を通じて政策の熟議を促す役割にとどまります。

要約

米国の議会は上院100名・下院435名からなり、任期・選挙方式・権限が明確に分かれています。上院は各州平等の代表で任期6年、条約批准や人事承認、弾劾裁判を担当します。下院は人口比例の代表で任期2年、予算法案の起案や弾劾訴追などを行います。日本の国会も衆議院465名・参議院248名の二院制ですが、衆議院は4年任期(解散あり)で小選挙区・比例並立制を採用し、予算や条約、首相指名で参議院に優越します。参議院は6年任期で半数改選される連続性ある院ですが、法案に対する拒否権は弱く、主に審議・修正や緊急集会などで抑制機能を果たしています。

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