ボラティリティの中の安定資産:金ETF過去最大流入が示す構造変化

テーゼ(命題):記録的なゴールドETFへの資金流入は投資家の需要と安全志向を示す

2026年2月発表の世界ゴールド協会データでは、1月のゴールドETFの純資金流入が190億米ドルに達し、月間として過去最高を記録した。金価格が月中に14%上昇し、これに伴って世界のゴールドETFの運用資産残高は6690億米ドルへ、保有量は4,145トンへ増加し、いずれも過去最高水準となった。地域別では北米とアジアが流入を主導し、欧州も地政学的緊張の高まりを背景に流入を続けた。このような大量の資金流入は、投資家が金を安全資産として重視し、価格上昇によって勢いを増したことを示している。

アンチテーゼ(反命題):価格の急落や経済・政策の不確実性は金需要を抑制する可能性がある

1月末には米国連邦準備制度理事会(FRB)新議長候補ケビン・ウォーシュ氏の指名が報じられ、金価格は急落した。価格が過熱感を帯びたことに加え、この人事が中央銀行の独立性に対する疑問を呼び、投資家心理は不安定になった。欧州では米国との貿易摩擦やグリーンランドをめぐる緊張が高まり、経済見通しの不透明感が広がっている。中国やインドでは国内経済の減速や株式市場の軟調が金への資金シフトを促したが、逆に金利上昇やドル高が進めば、非金利資産である金の魅力が低下する可能性もある。トレーディングボリュームの急増とCOMEXネットロングポジションの減少は、高いボラティリティの中で短期投機や利益確定が進んだことを示す。

ジンテーゼ(総合):価格調整局面でも金への需要は高まり、不確実性へのヘッジとして機能している

テーゼでは資金流入の大幅増加を肯定的に捉えたが、アンチテーゼでは価格急落や政策不確実性を指摘した。総合的に見ると、1月の価格調整にもかかわらず、投資家は金へのエクスポージャーを拡大した。北米では実質金利低下や金融政策の先行き不透明感が続き、月末の価格下落時にも投資家がディップを買う姿勢がみられた。欧州では米国との貿易摩擦やインフレ圧力が続く中、安全資産としての金の需要が増した。アジアでは中国が6億ドル、インドが25億ドルの流入を記録し、金価格の上昇や地域的な政治不安を背景に機関投資家が金を選好したと考えられる。

一方、ゴールドの取引量は1日平均6230億米ドルと過去最高を更新し、オーバーザカウンター取引やデリバティブ取引の急増が見られた。これはボラティリティ急増時に短期的な売買が活発化した結果であり、投資家が価格変動を利用してポジションを調整していることを示す。COMEXのネットロングが6%減少したことは利益確定の動きを裏付けるが、持続的な需要によって流入全体は増加し、金価格の下支えとなった。

要約

2026年1月のゴールドETF市場では、総資産残高・保有量とも過去最高を更新する大規模な資金流入が観測された。北米とアジアが流入を主導し、欧州やその他の地域でも地政学的緊張やインフレ懸念から金需要が高まった。価格は月末に急落したものの、投資家は調整局面で積極的に購入を行い、金の安全資産としての魅力と不確実性へのヘッジ機能が改めて確認された。大きなボラティリティと取引量の増加は短期的な投機や利益確定の動きを示すが、長期的には金需要の強さが浮き彫りになっている。

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