米国における**M2(マネーストック)とマネタリーベース(Monetary Base)**の違いについて説明します。
1. 定義と構成要素
M2(広義のマネーサプライ)
M2は、流通している貨幣(現金)と銀行預金の合計で、経済活動において実際に利用される資金量を示します。
- 構成要素:
- M1(現金 + 当座預金)
- 準通貨(貯蓄預金、定期預金、小口のMMF(マネー・マーケット・ファンド)など)
M2は銀行貸出の影響を強く受けるため、景気動向との関連が深い指標です。
マネタリーベース(ベースマネー)
マネタリーベースは、中央銀行が直接供給する貨幣量のことを指します。
- 構成要素:
- 現金流通量(市中に出回る紙幣・硬貨)
- 銀行が中央銀行に預ける準備預金(Federal Reserve Deposits)
マネタリーベースはFRB(連邦準備制度)による金融政策の影響を直接受け、量的緩和(QE)や金利政策によって大きく変動します。
2. 供給主体の違い
指標 | 供給主体 | 主な影響要因 |
---|---|---|
M2 | 民間銀行 | 銀行貸出、預金の動向、信用創造 |
マネタリーベース | FRB(中央銀行) | FRBの公開市場操作、準備預金、QE |
マネタリーベースが増えても、銀行貸出が増えないとM2の増加につながらないため、金融政策が実体経済に影響を与えるには銀行の信用創造が重要になります。
3. 実際の推移と金融政策
- 2008年のリーマン・ショック後、**FRBはQE(量的緩和)**を実施し、マネタリーベースを急増させました。しかし、銀行の貸し出しが増えなかったため、M2の伸びは限定的でした。
- 2020年のコロナ危機では、FRBの大規模な金融緩和により、マネタリーベースとともにM2も大幅に増加しました。
- 2022年以降の**QT(量的引き締め)**では、FRBがバランスシートを縮小し、マネタリーベースが減少。その結果、M2も減少傾向にあります。
4. まとめ
項目 | M2(マネーストック) | マネタリーベース |
---|---|---|
供給元 | 民間銀行 | FRB(中央銀行) |
構成要素 | M1 + 準通貨 | 現金流通量 + 準備預金 |
影響を受ける要因 | 銀行貸出、信用創造 | FRBの金融政策(QE, QT) |
景気との関連性 | 実体経済に直接影響 | 金融市場に直接影響 |
M2は実際の経済活動を反映する指標、マネタリーベースは金融政策の影響を測る指標として、それぞれ異なる意味を持ちます。
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