マネーサプライ、マネーストック、マネタリーベースの比較

政治経済

マネーサプライ(Money Supply)、マネーストック(Money Stock)、マネタリーベース(Monetary Base)は、経済における貨幣の量を測る指標ですが、それぞれ異なる範囲を指します。


1. マネタリーベース(Monetary Base, MB)

定義:
中央銀行が供給する「基礎的な貨幣」のことで、金融機関が中央銀行から得る資金の供給量。

構成要素:

  • 市中に出回る現金(流通現金)
  • 金融機関の中央銀行にある当座預金(準備預金)

特徴:

  • 中央銀行(日本なら日銀、米国ならFRB)が直接コントロールできる。
  • 量的緩和(QE)などの政策で操作される。
  • これ単体では経済全体の流動性を測るのに不十分。

2. マネーサプライ(Money Supply, M1, M2, M3など)

定義:
経済全体で流通する貨幣の量。広義には「マネーストック」と同じ意味で使われることもある。

代表的な指標:

  • M1: 現金(流通現金)+要求払い預金(普通預金など、即時引き出せる預金)
  • M2: M1 + 定期預金などの流動性の低い預金(日本ではM2がよく使われる)
  • M3: M2 + 金融機関の発行する譲渡性預金(CD)など

特徴:

  • 銀行の信用創造(貸し出し)によって増減する。
  • 政策金利や金融緩和の影響を受けるが、直接制御は難しい。
  • インフレや景気との関係が深い。

3. マネーストック(Money Stock)

定義:
日本において、国内の経済主体(政府を除く民間企業・個人)が保有する通貨量を示す指標。基本的に「マネーサプライ」と同義だが、厳密には日本では「マネーストック」と呼ばれることが多い。

特徴:

  • 日本銀行が統計として採用。
  • M1、M2、M3といった区分があり、広義のマネーサプライとほぼ同義。
  • 海外では「マネーサプライ」と呼ばれることが一般的。

比較表

指標内容主な構成供給元中央銀行の操作可能性
マネタリーベース (MB)中央銀行が供給する基礎的な貨幣流通現金 + 中央銀行当座預金中央銀行高い
マネーサプライ / マネーストック (M1, M2, M3)経済全体で流通する貨幣量M1: 現金 + 普通預金 M2: M1 + 定期預金 M3: M2 + CDなど民間銀行の貸出と家計・企業の動き低い(間接的に影響)

まとめ

  • マネタリーベースは中央銀行が直接管理しやすいが、それだけでは経済の流動性を判断しにくい。
  • **マネーストック(マネーサプライ)**は実際に経済で流通している貨幣量を示し、景気やインフレの判断材料になる。
  • 日本では「マネーストック」が正式な統計指標として使われるが、国際的には「マネーサプライ」という用語が一般的。

この違いを理解すると、金融政策の影響や市場の流動性をより的確に把握できます。

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