製油(石油精製)とLNG(液化天然ガス)の比較

用語

製油(石油精製)とLNG(液化天然ガス)は、どちらもエネルギー供給の中心を担うが、原料・プロセス・用途・市場動向などが異なる。以下の観点で比較する。


1. 原料と精製プロセス

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
原料原油(Crude Oil)天然ガス(Natural Gas)
処理プロセス蒸留、クラッキング、改質脱水・脱硫 → 圧縮・冷却(-162℃)
主要生成物ガソリン、軽油、ジェット燃料、ナフサ、重油LNG(燃焼用)、LPG(プロパン・ブタン)
副産物石油化学原料(エチレン・ベンゼン)コンデンセート、NGL(天然ガス液)

2. 用途と市場

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
主な用途– 自動車・航空燃料(ガソリン・ジェット燃料) – 発電(重油・ナフサ) – 石油化学原料(プラスチック・化学品)– 発電(火力発電) – 産業用・家庭用燃料(都市ガス) – 輸送(LNG燃料船・LNGトラック)
市場特性需要は依然大きいが、電動化・脱炭素の影響で成長鈍化クリーンエネルギー需要増加で成長市場
主な生産国サウジアラビア、アメリカ、ロシア、中国、インドカタール、オーストラリア、アメリカ、ロシア

3. 価格変動と市場の影響

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
価格指標WTI(米国原油)、Brent(北海原油)、Dubai(中東原油)JKM(アジアLNG)、Henry Hub(米国)、TTF(欧州)
価格変動要因– OPEC+の生産調整 – 地政学リスク(中東紛争など) – 電動車(EV)の普及– 天候(寒波・熱波) – 供給国のLNGプラント稼働状況 – 長期契約 vs スポット市場の動向
過去の価格変動– 2008年:リーマンショック後の急落 – 2020年:コロナ危機で大幅下落 – 2022年:ロシア・ウクライナ戦争で急騰– 2021-2022年:欧州エネルギー危機で高騰 – 2023年以降:供給拡大で価格下落

4. 環境負荷と脱炭素動向

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
CO₂排出量高い(ガソリン・軽油燃焼時)低い(石油に比べCO₂排出が約50%減)
SOx/NOx排出高い(硫黄分・窒素酸化物の排出)低い(硫黄分がほぼゼロ)
脱炭素政策の影響– EV・再生可能エネルギーの普及で需要減 – バイオ燃料・e-fuelの開発– LNGは脱炭素の過渡的エネルギーとされ、短期的には需要増 – メタンスリップ問題(GHG排出)で水素・アンモニアとの競争激化

5. インフラと貯蔵

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
輸送手段タンカー(VLCC、Suezmax)、パイプラインLNG船(Q-Flex/Q-Max)、パイプライン
貯蔵タンク貯蔵(常温)低温(-162℃)での特殊貯蔵が必要
インフラ投資既存設備が充実(精製所・パイプライン・GS)LNGターミナル・冷却設備が必要で投資額が大きい

6. 主要プレイヤー

業界代表企業(上流~下流)
石油精製・販売ExxonMobil、Chevron、Shell、BP、TotalEnergies
LNG生産・輸出QatarEnergy、Cheniere Energy(米)、Woodside Energy(豪)、Novatek(露)

7. まとめ

項目製油(石油精製)LNG(液化天然ガス)
市場成長性低成長(EV普及、脱炭素政策の影響)成長市場(エネルギー転換の過渡期燃料)
価格変動リスクOPEC、地政学リスク、需要減少供給制約、天候リスク、長期契約市場
環境負荷高い(CO₂・SOx/NOx排出)低い(CO₂50%減、クリーンエネルギーとみなされる)
投資コスト低め(既存インフラ活用可能)高め(冷却・貯蔵・輸送のコスト大)

🔹 結論

  • 短期的(~2030年)
    • LNGは脱炭素移行期の重要エネルギーとして成長が期待される
    • 製油業界はバイオ燃料やカーボンニュートラル技術の導入が必要
  • 長期的(2030年~)
    • 製油業界はEV・水素燃料の台頭で縮小
    • LNGも最終的には水素・アンモニアに代替される可能性

石油精製は長期的に縮小が避けられない一方、LNGはクリーンエネルギーとしての役割を果たすが、最終的には再生可能エネルギーや水素への移行が求められる。

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