【外貨準備高とは】
外貨準備高(Foreign Exchange Reserves)とは、
政府または中央銀行が保有している「外国通貨建ての資産」の総額のことです。
つまり一言で言えば、
➡️ 中央銀行が持っている「いざという時に使う外貨の貯金」
と考えるとイメージしやすいです。
【もう少し詳しく】
■ 外貨準備高に含まれる主な資産
- 外国通貨(例:米ドル、ユーロ、円など)
- 外国政府発行の国債(例:米国債)
- 金(Gold)
- IMF特別引出権(SDR)
- IMFへの出資ポジション(リザーブポジション)
これらはすべて「外国で自由に使える資産」であり、いざというとき自国通貨を守るために使われます。
【なぜ外貨準備が必要か?】
■ 主な目的は3つです。
- 為替市場の安定化
→ 自国通貨が急落したときに、外貨を売って自国通貨を買い支えるため。 - 対外支払いに備える
→ 海外への輸入代金や、海外からの借金返済に必要な外貨を確保するため。 - 国際的な信用力維持
→ 外貨準備が潤沢にある国は「信用が高い」と見なされ、投資家が安心する。
つまり、外貨準備高が豊富だと
- 通貨防衛
- 金融危機への備え
- 国の信用力向上 に大きく役立つのです。
【誰が管理しているのか?】
基本的に、
- 中央銀行(例えば、日本なら日本銀行、中国なら人民銀行)が管理しています。
ただし、
- 形式的には政府(財務省)と中央銀行が共同で管理する場合もあり、
- 資産の運用は主に中央銀行が担当しているのが一般的です。
例えば:
- 日本では、実質的には財務省の「外国為替資金特別会計(外為特会)」で管理されていますが、日銀が実務を担っています。
- 米国では、財務省の外貨保有は限定的で、FRB(連邦準備制度理事会)が中心です。
【まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 中央銀行が保有する外国通貨建て資産 |
中身 | 外貨、米国債、金、IMF関連資産など |
目的 | 為替安定、支払い備え、信用力向上 |
管理主体 | 主に中央銀行(場合により政府共同) |
承知しました。 G20各国の外貨準備高に占める金の割合について、
- 最新の国別データ一覧(表形式)
- 過去数年の推移(可能な限りグラフや時系列で)
- 米・中・独・露など主要国間の比較と、その背景要因に関する簡潔な分析コメント をまとめたレポートを作成いたします。 少々お時間をいただきますので、準備が整い次第お知らせします。
G20各国の外貨準備に占める金の割合 (2025年時点)
最新のG20各国の金保有状況
2025年時点でのG20各国の外貨準備に占める金の割合(%)と金保有量(トン)の一覧を以下の表に示します(データは主に2024年末時点の公表値に基づきます)。各国の金保有量は国際通貨基金(IMF)統計などに報告された公式準備高であり、金価格の変動や外貨準備高の変化によって金比率は年々変動します。表を見ると、米国やドイツ、フランス、イタリアなど伝統的に金準備の多い国は、外貨準備に占める金の比率が60~70%台と突出して高くなっています。一方、中国や日本、韓国、メキシコなど外貨準備全体が大きい割に金保有量が比較的少ない国では、金の比率は一桁台(数%程度)に留まっています。また、ロシアやトルコ、南アフリカ、アルゼンチンなどでは金の比率が二桁台と高めで、各国の経済状況や政策によって金の位置づけが異なることがわかります。
国 | 金準備比率(%) | 金保有量(トン) |
---|---|---|
米国 | 74.9% | 8,133.5 |
ドイツ | 74.3% | 3,351.5 |
フランス | 72.2% | 2,437.0 |
イタリア | 70.7% | 2,451.8 |
ロシア | 31.9% | 2,335.9 |
中国 | 5.5% | 2,279.6 |
日本 | 5.8% | 846.0 |
インド | 11.4% | 876.2 |
トルコ | 35.7% | 615.0 |
サウジアラビア | 5.7% | 323.1 |
英国 | 14.9% | 310.3 |
インドネシア | 4.4% | 78.6 |
南アフリカ | 16.1% | 125.4 |
メキシコ | 4.3% | 120.3 |
ブラジル | 3.3% | 129.7 |
オーストラリア | 10.9% | 79.9 |
韓国 | 2.1% | 104.4 |
アルゼンチン | 17.5% | 61.7 |
カナダ | 0% | 0 |
上記の表から、G20各国の金準備の状況には大きな差異があることが読み取れます。米国は公式に8,133トンもの膨大な金を保有しており、外貨準備の約75%を金が占めます。ドイツ、フランス、イタリアもそれぞれ2,400~3,400トン前後の金を持ち、準備高に占める割合が70%前後と高水準です。これらの国は第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制や金本位制の時代からの大量の金保有を維持しており、歴史的に外貨準備の中核として金を重視してきたことが伺えます。またユーロ導入後はユーロ圏各国が外貨(ドルなど)の準備を以前ほど必要としなくなったことも、金比率が高くなる一因です。
一方、中国や日本は金保有量こそ世界上位ですが、外貨準備がそれ以上に巨額(数兆ドル規模)であるため、金の占める割合は5%前後にとどまります。例えば中国は2,280トン前後、日本も約846トンの金を持っていますが、それぞれ外貨準備全体に対する比率は5%程度です。これらの国では外貨準備の大半が米ドルや債券などで運用されており、金は補完的な役割となっています。韓国も100トン超の金を保有していますが、準備全体が大きいため比率はわずか2%程度です。またカナダは中央銀行保有の公式金準備をほぼ売却しており(数十オンス程度しか残していないと報じられています)、主要経済国では珍しく金の比率が0%となっています。
ロシアやトルコ、南アフリカ、アルゼンチンでは、金の割合が15~35%と比較的高くなっています。ロシアは2,300トン以上の金を保有し、金比率は約32%です。ロシアは2010年代に積極的に金を買い増ししてドル資産を圧縮する戦略を取ってきたため、この比率が高くなりました。さらに2022年以降、ウクライナ紛争に伴う制裁でロシアの一部外貨準備が凍結されたこともあり、公式発表される外貨準備に占める金の割合が一段と上昇したと考えられます。トルコも中央銀行が金を活発に売買しており(保有量約615トン)、不安定な自国通貨リラを補完する資産として金を活用しているため、金比率が35%を超えています。南アフリカは金産出国でもあり歴史的に金準備が比較的大きいため16%程度、アルゼンチンは外貨不足の中で金(約62トン)が貴重な準備資産となっており比率が17%台に達しています。
主要国の金保有比率の推移(過去5年間)
主要国(米国、ドイツ、中国、ロシア、日本、インド)の外貨準備に占める金の比率推移を、2019年から2024年までの時系列でプロットしたグラフです。橙色のラインは米国、黄色のラインはドイツで、両国とも概ね70%前後で推移しつつ、2021年頃にやや低下した後、再び上昇傾向にあります。ピンク色のライン(インド)は右肩上がりで、2019年の6%台から2024年には11%を超えるまでに上昇しています。水色のライン(日本)は僅かながら上昇し、数年間で約3%から6%弱へ上がっています。赤色のライン(中国)は緩やかに上向きで、3%程度から5%超へと増加傾向です。緑色のライン(ロシア)は2019年の約20%から2024年には30%超へと急上昇しています。
上記グラフの推移から、先進国と新興国で金比率の動きに違いが見られます。米国やドイツは突出して高い金比率を維持していますが、この割合自体は大きく変化していません。2020年前後に一時比率が下がっているのは、金価格の変動や他の準備資産の増減(例えば米国ではコロナ禍でドル流動性が増えた可能性)による一時的なものと考えられ、その後は再び上昇に転じています。インドや中国は年々じわじわと金比率が上昇しており、外貨準備の多様化を進めていることが示唆されます。特にインドは近年積極的に金を購入しており、比率上昇が顕著です。日本も多少の上昇が見られますが、依然として低い水準です。ロシアは上昇幅が大きく、2010年代後半から続けてきた金購入と、2022年の制裁リスクによる外貨準備構成の変化が反映された結果といえます。
主要国間の比較分析と最近の傾向
以上のデータと推移を踏まえると、主要国それぞれで**「金の比率が高い理由・低い理由」**が異なることがわかります。以下にその背景や戦略的なポイントをまとめます。
- 金比率が高い国(米・欧州先進国): アメリカやドイツ、フランス、イタリアなどは歴史的に大量の金を保有しており、外貨準備の中核として金を据えてきました。これらの国では通貨や信用への信頼を担保する目的で金準備を厚く持つ伝統があり、米ドルやユーロといった基軸通貨国であることから他国通貨を大量に備蓄する必要性が相対的に低いという事情もあります。特に米国は基軸通貨発行国として自国通貨建てで取引できますし、欧州主要国もユーロ導入後は自国通貨防衛のための外貨準備が不要になった面があります。その結果、外貨準備残高に占める金の割合が結果的に高く維持されています。ただし、これらの国々は近年ほとんど金を買い増ししておらず、比率の変動は主に他の準備資産額や金価格の変動によるものです。
- 金比率が低い国(中国・日本・韓国など): 中国や日本、韓国、メキシコ、ブラジルなどでは、外貨準備の絶対額が非常に大きく、その大部分を米ドル建て資産(米国債や外貨預金など)が占めています。例えば中国は3兆ドル以上、日本も1兆ドル超の準備高を抱えており、為替介入や金融危機対策のために流動性の高い外貨資産を重視しています。これらの国では金は準備ポートフォリオのごく一部であり、安全資産として一定量は保有するものの、比率は一桁台に留まります。中国は近年外貨準備全体を減らす一方で金を増やしていますが、それでも総額に対する割合はまだ低く、ドルへの依存度を急激に下げることは慎重になっている様子がうかがえます。日本も長年金の買い増しは行っておらず、為替平衡操作資金としての外貨(ドル)を重視しています。韓国やメキシコ、ブラジルも同様に、通貨防衛や流動性確保を優先しているため金比率が低く抑えられています。
- 金比率を近年上げている国(インド・トルコ・ロシアなど): 新興国の中でもインド、トルコ、ロシアはここ数年で金の比率を積極的に高めています。インドは通貨ルピーの国際化が限定的な中、外貨準備の多様化とインフレ防衛策として2018年以降着実に金を購入してきました。その結果、金保有量は800トン台後半となり、比率も10%超に達しています。背景には、ドル一極体制への警戒感(米金融政策や制裁リスクへの備え)や、自国経済における金の文化的・経済的価値の高さがあります。トルコは近年インフレと通貨危機に見舞われる中、中央銀行が金の売買を通じて市場に介入したり、民間の金預金を外貨準備に組み入れたりする政策を取ってきました。そのため金準備が増減しやすく、比率も変動的ですが、総じて高い水準を保ちながら上昇傾向にあります。加えてトルコは地政学リスクに備えて外貨準備を多角化する戦略もあり、米ドル以外の安全資産として金を厚めに持っています。ロシアは国家戦略として「脱ドル化」を掲げ、2014年のクリミア危機以降に金購入を加速させました。外貨準備の中で米ドル資産の割合を大幅に引き下げ、その代替として金と中国人民元を増やした結果、金比率が急上昇しています。欧米から経済制裁を受けるリスクを見据え、金ならば他国に凍結されず価値を保てるという判断もあったと言われます。
- 経済不安に直面する国(アルゼンチン等): アルゼンチンは慢性的なドル不足と自国通貨の信認低下に苦しんでおり、外貨準備が枯渇する局面でも最後の砦として金準備を維持しています。約60トン強の金は政府にとって信用補完資産であり、結果的に準備に占める比率が高くなっています。各国とも経済危機に陥ると外貨準備の取り崩しが進み、相対的に金の割合が上がる傾向があります。アルゼンチンのケースは、金が国家の信用を支える最終手段として機能している例と言えるでしょう。
最近の世界的な傾向として、インフレの高まりや地政学的緊張(米中対立やロシア制裁など)を背景に、中央銀行が金を積極的に購入する動きが強まっています。2022年には中央銀行の金購入量が過去数十年で最大となり、2023年もその勢いが続きました。これは、ドルやユーロなど従来の主要外貨への過度の依存を避け、準備資産を分散化してリスクヘッジしようとする戦略によるものです。特に新興国は、自国通貨が不安定な場合に備えて価値の普遍的な金を蓄える傾向が強まっています。また、米国による経済制裁の事例が示すように、外貨準備を他国に凍結されるリスクが現実味を帯びたことも、金の保有比率を見直すきっかけとなっています。金は物理資産でありどの国にも属さないため、非常時における信頼資産として再評価されているのです。
まとめると、G20各国の金準備比率はその国の経済規模、通貨の国際的地位、外交・安全保障上の戦略、過去の経緯などによって大きく異なります。基軸通貨国や欧州先進国は伝統的な大量の金保有により高比率を維持し、経済安定志向の国は流動資産重視で低比率、そして新興国の一部はリスク分散や自国通貨防衛のため比率を高める傾向にあります。昨今の世界的な経済不確実性の中で、「有事の金(ゴールド)」の存在感が増しており、各国の外貨準備における金の役割は改めて注目されています。
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