FRBの量的引き締め仕訳例

FRB(連邦準備制度理事会)の量的引き締め(Quantitative Tightening: QT)の具体的な仕分け例を以下のように示します。


FRBの量的引き締めにおけるバランスシート項目の仕分け例

量的引き締めとは、FRBが保有資産を減らして金融市場から流動性を回収する政策を指します。具体的には、バランスシート上で次のような仕分けを行います。

①国債の満期償還時(償還金を再投資しない場合)

FRBが保有している米国債が満期を迎え、その償還資金を再投資せずに放置することで、市場から流動性を吸収します。

仕訳科目(FRB側)借方(Dr.)貸方(Cr.)
準備預金 (Reserves)100億ドル米国債 (U.S. Treasury)

(解説)

  • FRBが保有する米国債が償還されると、政府はFRBに対して現金を支払います。
  • この現金は準備預金(銀行のFRB預金)としてFRBに返済されますが、FRBが再投資しないことで準備預金が減少(資金が市場から引き揚げられる)します。

②住宅ローン担保証券(MBS)の償還・早期返済(再投資しない場合)

FRBが保有するMBSの返済資金を再投資せず、市場から流動性を吸収するケースです。

仕訳科目(FRB側)借方(Dr.)貸方(Cr.)
準備預金 (Reserves)50億ドルMBS (Mortgage-Backed Securities)

(解説)

  • 住宅ローンの借り手が返済することで、FRB保有のMBSの残高が減少します。
  • FRBが再投資しないことで、市場に存在する準備預金が同額減少します。

③保有債券を市場で直接売却する場合(積極的QTの場合)

FRBが市場で米国債やMBSを直接売却し、市場から即座に流動性を回収するケース(稀なケースです)。

仕訳科目(FRB側)借方(Dr.)貸方(Cr.)
準備預金 (Reserves)200億ドル米国債またはMBS

(解説)

  • 市場参加者がFRBから債券を買うために準備預金を支払います。
  • FRBのバランスシートでは資産(国債、MBS)と準備預金(負債)が同額減少します。

量的引き締めの効果(参考)

  • 準備預金が減少 → 銀行間市場の資金がタイト化 → 市場金利上昇
  • 市場流動性が低下 → インフレ圧力の緩和 → 金融引き締め効果

以上がFRBの量的引き締めに伴う具体的な仕分け例です。

FRBが保有する債券(国債やMBS)の償還資金を再投資する場合、次のような仕訳になります。

FRBが保有債券の満期償還時、償還資金を再び市場で債券購入に充てることを指します。


具体的な仕訳例(FRB側)

① 国債が満期償還される時(再投資する場合)

まず、国債が償還される際の仕訳(償還資金が入る):

仕訳科目(FRB)借方(Dr.)貸方(Cr.)
準備預金(Reserves)100億ドル米国債(U.S. Treasury)

次に、その資金で新たな国債を購入した時の仕訳:

仕訳科目(FRB)借方(Dr.)貸方(Cr.)
米国債(U.S. Treasury)100億ドル準備預金(Reserves)

(解説)

  • 準備預金の総額は、償還資金を即座に再投資するため、差し引き変化なし(市場の流動性を維持)。
  • 国債が償還されても再投資することで、FRBのバランスシート規模は維持されます。

② MBS(住宅ローン担保証券)が償還される時(再投資する場合)

償還時の仕訳:

仕訳科目(FRB)借方(Dr.)貸方(Cr.)
準備預金(Reserves)50億ドルMBS(Mortgage-Backed Securities)

再投資(新たなMBSを購入)した場合:

仕訳科目(FRB)借方(Dr.)貸方(Cr.)
MBS(Mortgage-Backed Securities)50億ドル準備預金(Reserves)

(解説)

  • 国債の例と同様、再投資によって市場の準備預金は維持され、流動性が保たれます。
  • バランスシートの規模も維持されます。

再投資の効果(まとめ)

  • 市場からの流動性吸収を回避(資金が市場に留まる)
  • 準備預金が一定水準を維持(金融緩和的効果を維持)
  • FRBのバランスシート規模を安定化(金融環境を一定に保つ)

以上がFRBによる債券償還資金再投資の具体的な仕訳例です。

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