国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者の違い

日本の公的年金制度は2階建て構造になっています。すべての20~60歳の人が1階部分の国民年金(基礎年金)に加入し、会社員や公務員など一部の人だけが2階部分の厚生年金に上乗せ加入します。国民年金には加入者の種別として第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者の3種類が定められており、それぞれ加入条件や保険料負担、受け取る年金の内容が異なります。以下では、この3種別の定義と対象者、2025年時点の保険料負担額・納付方法、年金制度における役割や給付内容、厚生年金との関係について分かりやすく解説します。また、会社員・公務員・自営業・専業主婦(夫)・学生など代表的な立場ごとにどの種別に該当するかも示します。

国民年金被保険者の種別と加入条件

まず、第1号・第2号・第3号被保険者のそれぞれの定義と対象者を確認します。以下の表に主要な違いをまとめました。

被保険者種別対象となる人(例)保険料負担(2025年)加入年金制度将来受け取れる年金
第1号被保険者自営業者、農業・漁業従事者、フリーランス、学生、無職の人など(20~60歳で第2号に該当しない全ての人)あり(月額17,510円を全額自己負担)国民年金のみ老齢基礎年金のみ
第2号被保険者会社員、公務員など厚生年金に加入している人あり(給与額に応じた保険料を負担。保険料率18.3%を事業主と折半国民年金+厚生年金老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例部分)
第3号被保険者第2号被保険者に扶養されている配偶者(20~60歳で年収130万円未満の被扶養配偶者、いわゆる専業主婦(夫))なし個人負担不要。配偶者が加入する厚生年金制度全体で負担)国民年金のみ老齢基礎年金のみ

第1号被保険者とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満のうち、第2号・第3号に該当しない人たちです。具体的には、自営業者や農林漁業従事者、フリーランス、学生、無職の人などが第1号に当たります。これらの人は国民年金にのみ加入し、将来は老齢基礎年金(国民年金から支給される基礎年金)のみを受け取ります。第1号被保険者は全員、自分で国民年金保険料を納める義務があります。

第2号被保険者とは、厚生年金保険に加入している人のことです。代表例として、民間企業の会社員や公務員が該当します。第2号の人は国民年金と厚生年金の両方に加入しており、いわば年金の1階部分(基礎年金)+2階部分(報酬比例年金)を併せて受け取る仕組みです。したがって、第2号被保険者は将来**老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金(報酬比例の年金)**を受給でき、年金の給付額が厚みを増すことになります。第2号被保険者も保険料納付の義務がありますが、その保険料は給与に応じて決まり、勤務先の会社と本人が半分ずつ負担します(事実上、毎月の給与から天引き)。

第3号被保険者とは、第2号被保険者(厚生年金加入者)に扶養されている20~60歳未満の配偶者です。典型的には、会社員や公務員の被扶養配偶者で年収130万円未満の専業主婦(夫)がこれに当たります。第3号被保険者も国民年金に加入していますが、自身で保険料を納める必要はありません。保険料負担はゼロで、配偶者が加入する厚生年金制度全体で第3号の保険料分を賄う仕組みになっています。そのため、第3号被保険者本人は老齢基礎年金のみを将来受け取ります(厚生年金の報酬比例部分は自身が厚生年金に加入していないため受け取れません)。なお注意点として、配偶者が自営業など第1号被保険者の場合は第3号被保険者にはなれず、扶養されていても配偶者と同じく自分で国民年金保険料を納める第1号被保険者となります。つまり、第3号被保険者は扶養者が第2号の場合に限られる点に留意が必要です。

保険料の負担額と納付方法(2025年時点)

各種別ごとに、国民年金および厚生年金の保険料負担の仕組みと金額(2025年時点)を詳しく見てみましょう。

  • 第1号被保険者の保険料:全国一律の定額で、2025年度(令和7年4月~翌年3月)の国民年金保険料は月額17,510円です。この金額は毎年度見直されており、例えば2024年度は月額16,980円でした。第1号被保険者はこの保険料を全額自己負担し、納付書や口座振替、電子決済などで自ら納付します。原則20歳から60歳まで納め続ける必要があります。ただし、学生や所得の低い人向けに負担を軽減する制度もあります。例えば、20歳以上の学生で所得が一定以下の場合、申請により在学中の保険料納付を猶予できる**「学生納付特例制度」**があります。この制度を利用しても将来の年金受給資格期間には算入されますが、免除期間分の年金額は減額されるため、後に追納(あとから納めること)も可能です。
  • 第2号被保険者の保険料:厚生年金保険料として給与(標準報酬月額と賞与)の額に応じて計算されます。保険料率は18.3%で固定されており、この率を労使で折半(折半負担)する決まりです。つまり、会社員本人は給与の9.15%相当を負担し、同額を雇用主が負担する形になっています。具体的な金額は給与額によって異なり、給与が高いほど毎月の厚生年金保険料も高くなります(上限も設けられています)。第2号被保険者の保険料は毎月の給与や賞与から天引きされ、会社が従業員に代わって納付します。この厚生年金の保険料には国民年金の保険料相当分も含まれており、第2号の人は国民年金分を別途支払う必要はありません。言い換えれば、第2号被保険者は1階部分(基礎年金)と2階部分(厚生年金)の保険料を一体的に納めていることになります。
  • 第3号被保険者の保険料:第3号被保険者本人は保険料を支払う義務が免除されています。保険料は、その人を扶養している第2号被保険者が加入する厚生年金制度全体で負担される仕組みです。具体的には、第2号被保険者の払う厚生年金保険料の中に配偶者の基礎年金分も含まれており、国全体で見れば現役世代の厚生年金保険料や税金の一部で第3号被保険者の年金記録が賄われている形になります。したがって、第3号の方自身は毎月の支払い負担はありませんが、将来国民年金から老齢基礎年金を受け取る権利は第1号の人と同様に確保されます。第3号被保険者になった場合は、配偶者の勤務先を通じて年金事務所へ種別変更の届出をする必要があります(扶養に入ったときや扶養から外れたときには届け出が必要)。

年金制度における役割と給付内容の違い

以上のように、第1号・第2号・第3号被保険者はそれぞれ異なる立場で年金制度に加入し、負担状況も異なります。それぞれの制度内での役割と、将来受け取る年金給付の内容について整理します。

  • 第1号被保険者の役割と給付:第1号の人々は、自営業者やフリーランスなど自ら収入を得ている個人が主体です。彼らは公的年金制度の基礎を支える存在であり、自分で保険料を納めて老後の基礎年金を確保します。国民年金の財源の一部は第1号被保険者の保険料で賄われています。また、第1号被保険者期間があることで、将来受け取る老齢基礎年金の受給資格期間(最低10年)を満たすことにもつながります。給付としては老齢基礎年金のみを受け取りますが、これは全国民共通の土台となる年金です。満額の老齢基礎年金を受け取るには原則40年間の保険料納付(480月分)が必要ですが、納付月数が足りない場合はその比例で減額された基礎年金を受け取ることになります。
  • 第2号被保険者の役割と給付:第2号の人々は会社員や公務員など給与所得者層で、公的年金の積立と給付両面で中心的な役割を担います。彼らの給与から厚生年金保険料が源泉徴収されることで、国民年金の基礎年金部分と厚生年金の報酬比例部分の財源が安定して確保されます。第2号被保険者は自身が老後に老齢基礎年金+老齢厚生年金を受け取れるだけでなく、その保険料負担によって第3号被保険者(扶養配偶者)の基礎年金分も支えている点が特徴です。言い換えれば、第2号被保険者は現役時代に自分と扶養家族の分の年金を支える役割があります。将来給付面では、収入と加入期間に応じて計算される厚生年金を上乗せでもらえるため、第1号のみの人より受給額が多くなる傾向にあります(厚生年金の受給額は人によって差があります)。また、万一障害を負った場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金を受け取れたり、死亡時には遺族基礎年金に加え遺族厚生年金が遺族に給付されたりするなど、第2号加入者は上乗せ部分の保障も受けられます。
  • 第3号被保険者の役割と給付:第3号の人々は主に専業主婦(夫)など家庭内で扶養されている層で、公的年金制度上は第2号被保険者を支える家族を保障する存在です。第3号制度の意義は、収入のない配偶者であっても年金受給権を確保することにあります。これにより、一家の生計を担う第2号被保険者がいる家庭では、配偶者が別途保険料を払わなくても将来夫婦2人分の基礎年金を受け取れるようになっています。これは一馬力で働く家庭の老後の保障を充実させる役割を果たしています。ただし、第3号被保険者自身が将来受け取れるのは老齢基礎年金のみであり、厚生年金部分は自ら加入していないため受給できません。そのため老後の年金額は、第2号として長年働いた人に比べると低くなります。とはいえ、第3号の期間も保険料納付済期間として扱われるため、老齢基礎年金の受給資格や障害・遺族基礎年金の保障はしっかり確保されています。

厚生年金との関係:第2号・第3号を中心に

厚生年金との関係について、特に第2号・第3号被保険者の仕組みを押さえておきましょう。前述のとおり、第2号被保険者とは厚生年金に加入している人を指し、厚生年金加入者は同時に国民年金第2号被保険者でもあります。会社員や公務員は国民年金だけでなく厚生年金にも加入しているため、保険料も両方の分をまとめて納め、将来は基礎年金と厚生年金の二階建ての給付を受け取ります。一方、自営業者など厚生年金に入らない人は国民年金(第1号)のみの加入です。このように、第2号被保険者と第1号被保険者の違いは厚生年金への加入有無と言えます。

第3号被保険者は、厚生年金加入者(第2号)の扶養配偶者であることが条件なので、厚生年金制度に密接に関連した国民年金の種別です。第3号の人は自らは厚生年金に加入していませんが、配偶者が厚生年金保険料を負担することで自分の基礎年金分も納付済みとみなされる仕組みになっています。逆に言えば、配偶者が厚生年金に加入していなければ第3号という区分自体が成立しません。例えば、夫が会社員(第2号)で妻が専業主婦なら妻は第3号ですが、夫が自営業者(第1号)の場合は妻も第1号として自分で国民年金保険料を納めなければなりません。このように、第3号被保険者かどうかは**配偶者の属性(第2号か否か)**によって決まります。厚生年金に加入している配偶者がいる場合のみ、第3号という扱いで保険料免除の恩恵を受けられるのです。

厚生年金と国民年金は制度上切り離された別物ではなく、第2号被保険者にとっては一体的な制度です。厚生年金保険料には国民年金の基礎年金部分が内包されており、第2号被保険者は国民年金の加入者でもある点が重要です。したがって、第2号被保険者がいる限りその配偶者を第3号として国民年金に加入させることが可能であり、保険料負担は厚生年金側で吸収されます。この国民年金第3号被保険者制度は、一家の収入源である厚生年金加入者に付随して成立する制度と言えるでしょう。近年では、パートタイム労働者への厚生年金適用拡大(短時間労働者の社会保険加入要件緩和)により、第3号被保険者だった配偶者が自ら第2号被保険者となるケースも増えています。例えば扶養内で働いていた主婦がパート収入増で厚生年金に加入すると、第3号から自身が第2号へ種別変更されることになります。このように、厚生年金制度の適用範囲拡大は第3号被保険者の減少につながる動きでもあります。

職業・立場ごとの種別分類

最後に、代表的な職業や立場の人がどの被保険者種別に当てはまるかを整理します。

  • 会社員(民間企業の従業員):厚生年金に加入するため、第2号被保険者になります。給料から厚生年金保険料が天引きされており、自身は国民年金と厚生年金の両方に加入しています。
  • 公務員:公務員も厚生年金の被保険者であり、第2号被保険者です。2015年以降、公務員の共済年金は厚生年金に統合されました。そのため、公務員は民間の会社員と同様に厚生年金保険料を労使折半で納め、第2号として基礎年金と厚生年金を将来受け取ります。
  • 自営業者・フリーランス:厚生年金に加入しない働き方のため、第1号被保険者です。20~60歳の間は自分で毎月国民年金保険料(2025年時点で月17,510円)を納めます。将来受け取るのは老齢基礎年金のみですが、希望すれば任意加入の国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などで上乗せも可能です。
  • 専業主婦(夫):配偶者が会社員・公務員など第2号被保険者であれば、自身は第3号被保険者となります。自分で年金保険料を払う必要はなく、配偶者の厚生年金を通じて国民年金に加入している扱いになります。ただし、配偶者が第2号ではなく自営業等の場合は第3号にはなれず、自身も第1号被保険者となって保険料を納めなければならない点に注意してください。
  • 学生:20歳以上60歳未満の学生は原則第1号被保険者です。在学中で収入が少ない場合、先述の学生納付特例を利用して国民年金保険料の納付猶予を受けている人も多いです(猶予中も種別は第1号のままです)。アルバイト程度の収入で厚生年金に加入できる勤務条件を満たしていない限り、学生は自ら国民年金保険料を納める必要があります。仮に学生でも週の労働時間や収入が一定基準以上で厚生年金に加入すれば、その時点で第2号被保険者となります。

以上、国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者について、加入条件・保険料・給付内容・厚生年金との関係などを整理しました。それぞれの種別は公的年金制度の中で役割が異なり、自身の立場によってどの種別になるかが決まっています。第1号は自営業等の自主納付者、第2号は会社員等の厚生年金加入者、第3号は第2号に扶養された配偶者という区分を押さえておけば、ご自身やご家族がどの年金にどう加入しているのかが理解しやすくなるでしょう。公的年金制度は複雑に感じられますが、基本的な構造と種別の違いを知ることで、年金の仕組みと自身の将来受け取る年金額のイメージがつかみやすくなります。

要約

以下に、国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者の違いと厚生年金との関係についての要点を、簡潔に要約します。

  • 第1号被保険者: 自営業者・学生・無職など、厚生年金に加入していない20~59歳。国民年金のみに加入し、保険料は2025年度で月額17,510円を自己負担。将来受け取れる年金は老齢基礎年金のみ。
  • 第2号被保険者: 会社員・公務員など。国民年金と厚生年金に加入し、厚生年金保険料は給与の18.3%(労使折半)を負担。老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金(報酬比例部分)も受け取れます。
  • 第3号被保険者: 専業主婦(夫)など、厚生年金加入者(第2号)の被扶養配偶者(年収130万円未満)。国民年金のみに加入し、保険料の自己負担はなし。受け取れる年金は老齢基礎年金のみで、第2号より少額です。

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