大統領任期4年周期とS&P500の年間リターン分析

第二次世界大戦後(1945年以降)約80年間のデータを用いて、アメリカ大統領の4年任期サイクルに沿ったS&P500指数の年間リターンを分析しました。大統領選挙直後の年から始まり、中間選挙の年、選挙前年、そして大統領選挙の年という4つのカテゴリにそれぞれ属する年について、平均・中央値・標準偏差・最小値(最大下落幅)・最大値(最大上昇幅)を算出し、パフォーマンスの傾向を比較します。

以下の表は、1945年から2024年までの各カテゴリ(年次区分)に属する年間リターンの統計量をまとめたものです。

カテゴリ平均中央値標準偏差最小値(最大下落幅)最大値(最大上昇幅)
大統領選の翌年 (Post-Election Year)12.8%15.6%17.6%-14.7%36.4%
中間選挙の年 (Midterm Year)7.6%5.3%20.8%-26.5%52.6%
選挙の前年 (Pre-Election Year)20.1%22.7%11.3%1.4%37.6%
大統領選の年 (Election Year)11.2%14.0%14.4%-37.0%32.4%

それでは、カテゴリごとに詳細を見ていきます。

大統領選の翌年(Post-Election Year)

定義: 大統領選挙の直後の年(新大統領の就任1年目、または現職再選後の翌年)にあたる年です。例えば2021年や2017年などが該当します。

パフォーマンスの統計: 戦後の大統領選翌年のS&P500年間リターンは平均約12.8%、中央値も**15.6%と比較的高い水準で、基本的にはプラスのリターンを享受する傾向にあります。標準偏差は17.6%で4カテゴリ中2番目に高く、ばらつきが大きめです。最も大きな下落となった年でもリターンは約-14.7%にとどまり、一方で最大の上昇は36.4%**に達しました。

傾向と背景: 大統領任期1年目は新政権の政策転換期に当たり、市場には一時的な不透明感や調整が生じやすいとされます。しかし歴史的には、大統領選翌年はおおむね堅調な株価上昇で始まるケースが多いことが示されています。ただし変動も大きく、例えば1973年(-14%台)のように景気後退や政策不安でマイナスとなった例もあります。一方で2009年や2021年のように前任期末の危機から回復する局面では、この年に30%以上の大幅上昇が記録されることもありました。総じて、新任期初年の市場は平均すると二桁のプラスですが、政策動向や景気循環によって良し悪しの振れ幅が大きい年と言えます。

中間選挙の年(Midterm Year)

定義: 大統領任期の2年目、すなわち連邦議会の中間選挙が行われる年です。例として2022年や2018年などがこのカテゴリに入ります。

パフォーマンスの統計: 中間選挙年は4年サイクル中で平均リターンが最も低く、約**7.6%にとどまります。また中央値はわずか5.3%と低く、半数の中間選挙年ではリターンが数%程度(もしくはそれ以下)にとどまったことを示しています。標準偏差は20.8%と4カテゴリ中で最大であり、年間リターンの振れ幅が非常に大きいことがわかります。実際、最小リターンは約-26.5%と全カテゴリ中最悪で、大幅な下落を記録した年があります。一方、最大リターンは52.6%**にも達し(これも全カテゴリ中最高の値)、大きな上昇を見せた年も存在します。

傾向と背景: 中間選挙年は株式市場にとって最も不安定な年といえます。政治的には与党への審判となる中間選挙を控え、不透明感が高まりやすいことや、任期前半の政策の影響が経済に現れる時期であることが要因として考えられます。歴史的に見ると、この年には弱気相場や調整局面が現れやすく、1974年や2002年、2022年など大幅下落を経験するケースがありました。その結果、任期2年目には平均リターンが低く抑えられています。しかし裏を返せば、中間選挙年後半からは相場が底打ちしやすく、翌年以降に向けて好転する転換点となることも多いです。実際、1954年や1982年、1998年のように弱気相場から切り返して異例の高リターン(40~50%台)を記録した年もあり、ボラティリティの高さが特徴です。

選挙の前年(Pre-Election Year)

定義: 大統領任期の3年目で、次の大統領選挙を翌年に控えた年です。例えば2023年や2019年、2015年などが該当します。

パフォーマンスの統計: 選挙前年の年間リターンは極めて好調な傾向があり、平均は約20.1%と4カテゴリ中で最も高くなっています。中央値も22.7%と非常に高く、過去数十年のこのカテゴリでは半数以上の年が20%を超えるリターンを達成しています。標準偏差は11.3%と他の年より低く、これはリターンが一貫して良好であることを反映しています。注目すべきは、**最小値でも+1.4%とわずかながらプラスであり、1945年以降の選挙前年にマイナスとなった年は一度もありません。最高リターンは37.6%**で、他のカテゴリ同様に大幅上昇の例も見られます。

傾向と背景: 選挙前年は株式市場にとって最も好調な年であることがデータから明らかです。これは、大統領与党が翌年の選挙を見据えて景気刺激策を取りやすいことや、前半2年間の政策効果が経済成長として現れるタイミングであることなどが背景に考えられます。市場心理的にも、選挙前年は政治リスクが比較的低下し、企業業績が堅調であれば株価が上昇基調を辿りやすい局面です。実際、戦後の選挙前年は一貫してプラスのリターンを確保しており、10%以上の高い伸びを示す年が続出しています。例えば、1987年や2015年こそ一桁台の上昇にとどまったものの、それ以外の多くの年では二桁%以上の力強い上昇を遂げており、4年サイクルの中で最も投資家に恩恵をもたらす年となっています。

大統領選の年(Election Year)

定義: 任期4年目で大統領選挙が実施される年です。例として2024年、2020年、2016年などが挙げられます。

パフォーマンスの統計: 大統領選の年のS&P500リターンは平均約**11.2%で、4カテゴリ中では中間的な水準です。中央値は14.0%とやや平均を上回っており、多くの場合で堅調な年だったことを示唆します。標準偏差は14.4%とほぼ平均的な変動幅ですが、最小値は-37.0%と非常に大きな下落が一度発生しています。一方、最大値は32.4%**で、大きな上昇を記録した選挙年も存在します。

傾向と背景: 大統領選の年は概して良好なパフォーマンスとなる場合が多いものの、その年固有のリスクイベントによってばらつきも見られます。過去約80年で見ると、このカテゴリの年はおよそ9割がプラスのリターンを達成しており、特に選挙の不確実性が解消される選挙後半~年末に市場が上昇するパターンがしばしば観察されます。ただし例外もあり、2008年(金融危機)や2000年(ITバブル崩壊初期)のように、選挙年に大きな経済・金融危機が重なった場合には年間を通じて二桁のマイナスに陥ることもありました。このような特殊ケースを除けば、選挙年の市場は比較的安定しており、政権交代の有無にかかわらず年末には上昇して終わることが多い点が特徴です。従って平均・中央値ともに二桁のプラスとなっていますが、年によっては選挙戦の行方や政策期待に応じて途中で変動が大きくなる可能性も否定できず、他の年ほど一貫した傾向は強くありません。

まとめ

以上の分析から、米国株式市場には大統領サイクルに沿った明確な季節性パターンが存在することがわかります。特に任期3年目(選挙前年)は平均・中央値ともに突出して高いリターンを示し、最も株価パフォーマンスが良好な年です。対照的に任期2年目(中間選挙年)は平均リターンが最低で、変動も大きいことから、4年サイクル中もっとも注意が必要な年と言えます。任期1年目(選挙翌年)と4年目(選挙年)はその中間で、おおむねプラスの成長軌道にあるものの、政策転換期や選挙動向によって良し悪しが分かれる傾向が見られます。

ただし、これらはあくまで統計的な傾向であり、個々の年の株価は経済情勢や金融政策、予期せぬ出来事(戦争や危機など)によって大きく左右される点に留意が必要です。したがって、大統領任期サイクルによる平均的な傾向を把握することは有用ですが、それだけで将来の市場を正確に予測できるわけではありません。しかし歴史的なデータから読み取れるこのパターンは、長期投資戦略やリスク管理の参考情報として投資家に認識されています。

要約

1945年以降のS&P500指数を分析し、米大統領任期4年周期の各年の株価傾向を統計的に比較した結果、次の傾向が明らかになった。

  • 大統領選の翌年(1年目):平均リターン12.8%で概ね好調だが、政策転換により変動も大きい。
  • 中間選挙の年(2年目):平均リターン7.6%と最も低く、市場は不安定で振れ幅が非常に大きい。
  • 選挙の前年(3年目):平均リターン20.1%と最も高く、株式市場に極めて好調な年。
  • 大統領選の年(4年目):平均リターン11.2%で比較的安定しているが、金融危機時など例外もある。

総じて、任期3年目が最も好調で、中間選挙年(2年目)は不安定であることが示された。

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