法人税の申告では、過去の欠損金(青色欠損金や災害損失欠損金)を損金算入して課税所得から控除することができますが、これは法人税法に定められた一般的な制度であり、租税特別措置法に基づく特例ではありません。そのため通常の欠損金の繰越控除を行う場合は、法人税申告書別表七(一)「欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書」に控除額や繰越残額等を記載して申告書に添付すれば足り、租税特別措置に関する「適用額明細書」には記入しません。
適用額明細書は、「中小企業者等の法人税率の特例」「少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例」など、租税特別措置法に定める優遇措置を受ける場合に、その条項や区分番号・適用額等を記載して提出する書類です。国税庁や専門記事では、法人税関係特別措置を適用しない場合には適用額明細書の提出は不要であり、税額や所得に影響を与える特例のときのみ提出する旨が示されています。また、適用額明細書の手引には「所得金額又は欠損金額が0又はマイナス(欠損金額)である場合は、税額控除や中小企業者等の法人税率の特例は適用されないので、適用のない措置の記載は必要ありません」と明記されています。
ただし、近年創設された「認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例」のように、一定の事業再構築計画の認定を受けた法人が欠損金控除限度額の緩和を受ける場合は、租税特別措置法の特例となるため、専用の明細書(認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例に関する明細書)を作成して適用額明細書に記載する必要があります。このように欠損金の損金算入が特例に基づく場合は適用額明細書が必要ですが、一般的な繰越欠損金の控除であれば適用額明細書の記入は不要です。

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