世界の景気減速と金の躍進

弁証法的考察

正(テーゼ): マクロ環境の復活と金市場の追い風

  • 2025年11月中旬に世界経済の注目がマクロ環境へ戻ったことが報告されました。米国では43日間に及ぶ連邦政府閉鎖が終結し、主要経済指標の公表が再開することで市場の視線が再び政策や景気に向かいました。
  • 同時に米連邦準備制度理事会(FRB)メンバーのタカ派的な発言により12月利下げの期待が後退し、米国債利回りは上昇。これによりドル高圧力が和らぎ、金価格は週次で1.9%上昇しLBMA金価格は1オンス4,071ドルに達しました。
  • 地政学リスク(中東やロシア・ウクライナ情勢、中国・日本間の緊張)や金ETF需要の回復が金の上昇を支え、年初来では56%高と主要資産をアウトパフォームしている。

反(アンチテーゼ): マクロへの過度な依存と調整リスク

  • しかし、週末に金は上昇分の大半を失い、過熱感が高まる中で「調整局面入り」の兆候もみられます。FRBの利下げ期待が後退したことは、金利上昇を通じて金の逆風となる可能性があります。
  • 世界株式市場はまちまちで、特に米政府再開後のマクロデータ発表やAI関連株のバリュエーション懸念がボラティリティを高めています。
  • 欧州ではユーロ圏GDPが前期比0.2%の低成長にとどまり、英国も0.1%と予想を下回る伸びに留まるなど景気の減速が確認されました。中国は固定資産投資や住宅価格の下落などで投資の減速が続き、消費者物価指数が0.2%上昇する一方で生産者物価指数は‐2.1%とデフレ圧力が続いています。こうした世界的な景気減速は金需要の弱含み要因になり得ます。

合(ジンテーゼ): マクロとミクロの交差点での金の役割

  • 上記のように、マクロ要因は金市場に重要な影響を与える一方、短期的には調整リスクも存在します。今後発表される米雇用統計やFOMC議事録、各国のインフレ指標は、利下げ期待とリスクオフ・センチメントの強弱を左右し、金価格の方向感を決定するでしょう。
  • 景気減速や地政学リスクが続く場合、安全資産としての金の魅力は維持されやすい。金ETFの資金流入やオプション市場での強気ポジションが増加していることは、投資家がリスクヘッジ手段として金を重視している証左です。一方で、金利の上昇やリスク資産の巻き返し局面では金が調整する可能性が高く、分散投資の一部としてバランスを取ることが求められます。
  • 結論として、マクロ環境の復活は金市場にとって重要なドライバーであるものの、短期的な調整や世界的な景気減速リスクも認識すべきです。投資家はマクロデータと政策スタンスの変化を注視し、金を含むポートフォリオ全体でリスクとリターンを考慮する必要があります。

要約

米政府閉鎖の終結によってマクロ経済指標が再び注目され、利下げ期待の後退や地政学リスクの高まりを背景に金価格は年初来56%高と大幅に上昇した。しかし、週末に上昇分を失ったことや欧米中の景気減速、FRBのタカ派姿勢などから短期的な調整リスクも高まっている。今後は米雇用統計やFOMC議事録などのマクロデータが金価格の方向性を左右し、安全資産としての役割と金利上昇の逆風の綱引きが続くと考えられる。

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