なぜ財政拡大でIS曲線は右へ動くのか:総需要と金利の力学

政府支出の増加や減税といった財政拡大は、民間需要に直接働きかけるため、財市場の均衡条件(所得 Yと金利 iの関係)を表すIS曲線を右に押し上げます。IS曲線は「投資=貯蓄(Investment‑Saving)」の条件を示し、財政支出が増えると総需要が増加し、既存の利率では需要超過となるので、より大きな所得水準が均衡となります。この右シフトには乗数効果があり、政府の支出増や減税による所得の増加が家計や企業の支出拡大を誘発し、追加的な所得と需要が生まれます。

新しい均衡では、生産と所得の増加に伴って取引需要が高まるため、貨幣需要が増えます。貨幣市場の均衡を示すLM曲線が一定のままだと、需要の増加分を吸収するために金利が上昇しなければなりません。これはIS曲線の右シフトが所得の増加をもたらし、その結果として金利(i)にも上昇圧力がかかることを意味します。金利の上昇は投資コストの増加を通じて民間投資を一部抑制しますが、財政拡大が十分に大きい場合には総需要増大効果が勝り、所得はなお高い水準に落ち着きます。

要約

財政拡大は財市場の需要を増やしてIS曲線を右に移動させ、均衡所得を高めます。所得が増えると貨幣需要も増えるため、貨幣供給が一定なら金利が上昇します。この結果、新しい均衡ではより高い所得と金利が同時に実現します。

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