1. テーゼ(肯定的側面)
AIは産業全体に「不可避の革新」として浸透し、米国株の主役となってきました。GPU の覇者であるNVIDIAは、データセンターや自動運転、生成AIなどの需要に支えられ、長期的な成長シナリオを築いています。パランティアもデータ解析プラットフォームを武器に公共部門・軍事分野で強い需要を維持し、AIブームの象徴的銘柄となりました。新しいAIモデルが次々と登場し、産業構造を変えることで、投資家の期待も高まり続けています。「AIの勝ち組に早く乗らないと取り残される」とするモメンタム志向の買いが市場を押し上げ、ETFの活用により一般投資家も広く参入できる環境が整っています。
2. アンチテーゼ(否定的側面)
一方で、急激な上昇による過熱感やバリュエーションへの疑念も無視できません。NVIDIAやパランティアの株価は50日線・100日線を割り込み、少しの悪材料や良好決算後の「出尽くし」で大きく下落する局面が繰り返されました。利益確定売りや決算失望の反動で反落リスクが高まり、「上昇→一服→反落→もみ合い」という波動を経ないと再上昇できない相場構造が表れています。さらに、グーグルが独自のTPUチップや大規模言語モデルGemini 3を発表し、バークシャー・ハサウェイなど大口投資家も参入したことで、AI勢力図が変化しました。グーグル株はこの1年でNVIDIAを上回るリターンを記録し、Metaがグーグル製AIチップを採用するとの報道も相次ぎ、従来の「NVIDIA一強」に対する構造的な挑戦が始まっています。
3. ジンテーゼ(統合)
結局のところ、AI相場は「長期的な技術革新と短期的な投機熱」が衝突しながら進化する複雑なプロセスです。NVIDIAのGPUは汎用性が高く、AI分野の裾野を広げる主役であり続けますが、グーグルのTPUのような特化型チップやクラウドプラットフォームとの相互補完により競争が多角化します。短期的には過熱調整が避けられず、VIXが高騰して不安心理が強まる場面や、年末・年初の利益確定売りで「ストンと落ちる」局面もあり得ます。しかし、AI技術自体の需要は強く、米国企業の決算も総じて好調であることから、中長期的にはAI関連企業が市場の牽引役である状況は続くでしょう。個別株選定が難しいときは、AI関連比率の高いETFや指数を利用して相場のリズムを捉え、上昇局面で過度に浮かれず、下落局面でも冷静にリスク管理することが重要です。
最後に要約
- AI相場は「革新への期待」と「過熱調整リスク」のせめぎ合いであり、短期的な波動を伴いつつ長期トレンドは上向き。
- NVIDIAとパランティアは先行者として高い評価を受けたが、過剰な期待による反落やバリュエーション懸念が顕在化。
- グーグルはTPUやGemini 3による技術革新で急浮上し、株価リターンがNVIDIAを上回るなど勢力図が変化している。
- これにより、AIチップ市場は「汎用GPUのNVIDIA」と「用途特化TPUのグーグル」の共存・競争という新たな段階へ。
- 投資家は短期的な調整局面に備えつつ、ETFなどを通じて中長期的なAI成長シナリオへの参加を検討すると良い。

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