2025-12

政治経済

レバレッジの罠:LDI運用が露呈した年金基金の構造的脆弱性

年金基金のLDI(Liability‑Driven Investment)運用は、負債のキャッシュフローを基準に資産配分を調整し、金利やインフレ変動から年金債務をヘッジする手法である。低金利の長期化が続いた先進国では、確定給付型年金制度の積...
政治経済

財政拡張の光と影:トラスショックとサナエノミクス

トラスショックの特徴財政膨張の急進性: 2022年に英国トラス政権が発表したミニ・バジェットは、巨額の減税とエネルギー料金補助を柱とし、財源や中期計画を示さなかった。年金基金のレバレッジ運用が国債価格の急落に繋がるなど、財政規律を欠く政策が...
政治経済

市場の反逆:トラスショックが示した財政規律の極限

「トラスショック」は、2022年9月に英国の首相に就任したリズ・トラス政権が発表した大規模減税とエネルギー料金の補助金をきっかけに、英国債市場と通貨・株式市場が急変動した事例を指す。財政規律を無視した政策が金融市場の信認を失い、英国の長期金...
投資

金鉱株は本当に割安なのか?GDX/GDXJの上昇と50億ドル流出を読み解く

金鉱株ETFであるGDXやGDXJは、2025年に入ってから金価格の急騰を背景に年初来で100%以上上昇しました。これは、各国の中央銀行による歴史的な金買い(年間1000トン超)、ドル離れの進展、地政学リスクの高まりなどを受けて金が「安全資...
投資

ビットコイン失速、金鉱株加速

2025年は金価格が史上最高値を更新し、金鉱株指数(GDX、GDXJ)が年初来で2倍以上の上昇を示す一方、ビットコインは10月の米中関税問題をきっかけに約1万9000億ドルの強制決済を招き、記録的な急落に見舞われました。これによって、投資家...
政治経済

金比率1割未満の日本:外貨準備とインフレ脆弱性

テーゼ:金準備が少ないほどインフレに弱いという主張日本の金保有比率は1割未満財務省の外貨準備統計によると、2025年時点で日本の総外貨準備は約1兆3,242億ドル、そのうち金は約932億ドルで全体の1割に満たない。民間資料では、約799トン...
投資

市場機能の空洞化:パッシブマネーがもたらす新たなバリュエーションの時代

1. 正(テーゼ)—価格発見機能の低下とマルチプル拡大パッシブ運用の急増:S&P500やオルカンなどの指数連動型投資が急拡大し、個人投資家だけでなく機関投資家もパッシブに資金を流入させるようになりました。指数に含まれる銘柄は、業績や割高・割...
投資

市場の物差しとしてのマルチプル

マルチプルとは何か – 基本的な概念定義 – ファイナンス用語で「マルチプル」とは、企業価値や株式価値に対して売上や利益、純資産などを基準にした**倍率(比率)**を指す。例えば企業価値が100億円、EBITDA(利払前・税引前・償却前利益...
投資

神話か泡か:S&P500とAI革命が切り開く新たな金融秩序

1. 正(テーゼ):指数集中とインデックス投資バブルの進行企業の集中度の高まり – S&P500の時価総額上位はNVIDIAやマイクロソフトなどの巨大テック企業(Mag7)に偏っており、米国株式市場の成長が実体経済から乖離している。指数のリ...
投資

負債圧力と資本政策の交差点:MSTRが2年分の配当原資を積む意味

〈序論〉2025年12月に米上場企業ストラテジー(MSTR)は、ドル建て配当金と社債利息の支払資金として14.4億ドル(約1.8年分相当)のドル準備金を新たに確保した。そのためにATM(アット・ザ・マーケット)を活用し、mNAVが1を上回る...